
22.5:9の縦長コンパクトスマホ「Qin 2 Pro」レビュー
※本記事は、通販サイト「Banggood」からサンプル提供を受けて執筆しております。なお、金銭の授受およびレビュー内容への干渉は一切ありません。
中国のガジェット通販サイト「Banggood」さんから、Xiaomi系列の一風変わったAndroidスマートフォン「Qin 2 Pro」をご提供いただきました。
発売直後から気にはなっていた機種なので早速使ってレビューを……と言いたいところなのですが、後述の理由でメーカーが意図した状態の端末とは言い切れないため、UIなどの一部項目については未評価とします。あらかじめご了承ください。
「Qin 2 Pro」ってどんな機種?
Qinシリーズは、いわゆるMiエコシステムの一員であるXiaomi関連企業が作った携帯電話です。第1世代のQin 1/1sは翻訳機能などを備えたシンプルなフィーチャーフォン(あるいはベーシックフォンと呼ぶべきか、微妙なライン)でした。第2世代のQin 2/2 ProはAndroidスマートフォンですが、Xiaomi本体が手掛けるような一般的なスマートフォンではなく、特殊なコンセプトで作られています。
従来型の携帯電話、あるいは家電のリモコンのようなサイズ感の縦長ボディ、2019年発売の機種としては最低限に絞られたスペックからも特殊なスマートフォンであることがひと目でわかります。AIアシスタントや音声翻訳、家電のリモコン(IRブラスター搭載)など、ある程度割り切った使い方の2台目端末として考えられていたようです。
2020年12月現在、Qin 2シリーズの後継機は出ていません。ただし、発売元のDuoqin Technologyは活動を続けているようで、「Qin K201」という日本で言うところのキッズケータイのような端末を出しています。
開封・付属品チェック
さて、ひとまず開封して中身をチェックしてみましょう。箱の時点で普通のスマートフォンよりも明らかに小さく、スマートバンドかな?と思ってしまうようなパッケージです。
本体のほかには、USB Type-Cケーブル、ケース、SIMピン、クイックスタートガイドが入っていました。真っ赤なUSBケーブルは付属品にしてはちょっとおしゃれ。
スマートフォンの付属ケースといえば透明なTPUケースをつけるところが多いですが、Qin 2 Proの場合はPP素材の超薄型ケースが付属します。特殊なサイズ感が売りの機種なので、魅力を損なわないように配慮している感じがして良いですね。
外観:特殊なのに不思議としっくり来るサイズ
Qin 2 Proは22.5:9という超縦長ディスプレイを採用し、狭額縁設計で本体もそのまま細長く仕上げています。ここまで縦長の端末はなかなか見かけませんが、強いて言えばEssential社が完成させられなかった幻の端末(Project Gem)、あるいはGalaxy Z Fold2のサブ画面に近いでしょうか。
画面サイズは5.05インチ(1440×576)、本体サイズは約132.5×55.5×8.6mm。上の写真はPixel 4aとの比較です。「普通のスマートフォンを縦に伸ばした」というよりは「普通のスマートフォンを幅だけ詰めた」感じのサイズですね。
アウトカメラはまあ、おまけ程度の画質です。突起もなく控えめに搭載されているので悪い気はしません。インカメラに至ってはそもそも搭載されていないという割り切りぶりがすごい。
側面から背面にかけては一体成型の樹脂パーツとなっています。決して高級感のある材質ではないのですが、剛性や一体感、滑らかな造形や手触りに触ってみて初めて分かる上質さがあります。昔のXiaomi、具体的には「Mi 4c」に近い印象でした(って書いて何人に伝わるんだ)。
右側面には音量キー、電源キー、アシスタントキーがあります。分かりにくいですが、小さい赤いキーが電源で、それにくっついている黒いキーがアシスタントキーです。本来はXiaomiのAIアシスタント「小愛同学」を呼び出せるはずです。
このような配置のため、電源キーは非常に押しづらく、片手でスクリーンショットを撮るのは困難。コンセプト的にアシスタントキーが主役なのは分かりますが、素直に分けて配置しても良かったんじゃないかなとは思います。
左側面にはSIMカードトレイ、上部には家電の操作などに使うIRブラスター、下部にはスピーカーとUSB Type-C端子があります。
スペック・動作:Unisoc製SoCを採用、割り切りが必要なスペック
Qin 2 Proのスペックをざっと紹介すると、SoCはUnisoc SC9863A、メモリは2GB、ストレージは64GB。ディスプレイは5.05インチ(1440×576)、バッテリーは2100mAhです。
まず目を引くのは、国内ではまず見かけないSoC。Unisocは中国の国策半導体企業で、搭載機はあまり多くないため使ったことがある人は極めて少ないのではないでしょうか。このSC9863Aはローエンドで、メモリの少なさもあってお世辞にも快適な動作とは言えません。
これでもProじゃないほうのQin 2よりは少しだけスペックが高いのですが、普通のスマートフォンとして使うのはかなり厳しいです。「ゲームはしないから」という人でも、Twitter for Androidのように日常利用に潜む激重アプリもありますからね……。軽いブラウジングやメール、マップぐらいならなんとか使えそうです。
そもそも、コンセプト的にほぼフィーチャーフォンに近い使い方に留まるライトユーザー向け、あるいは翻訳機やリモコン代わりに使うサブ端末として本来は提案していたのでしょうから、割り切りの上で価格を抑えることを優先したのだと思われます。
(参考)UIや使用感など
さて、Qin 2 Proには本来、その特殊なコンセプトに基づいた独自UIがあるのですが、筆者の手元にある端末は素のAndroidに近いものとなっており、残念ながら肝心の使い勝手を評価することができません。
ショップの説明としてはGlobal ROMとされていますが、この仕様はBanggoodやAliExpressで流通してはいるものの、そもそも中国国外で同機種が正規販売されていたと断言できる根拠は見当たりません。
また製品を見ても、不自然なほど素に近いUIやプリインストールアプリ、なぜかGoogle Play Musicの起動にしか使えないアシスタントキー、いい加減な端末情報、そもそもグローバル版という割には完全に中国向けなラベル類や認証表記(電磁的表示に至ってはそもそも項目がない)など疑問が残ります。過去の経験を踏まえて考えると、これはいわゆる「ショップROM」ではないかというのが私の見解です。
一応、ソフトウェアはどんな状態でも良いからQin 2 Proがどうしても欲しいという人のために、Global ROM(仮)の使用感も軽くお伝えしておきます。
まず、先述の通りスペックがかなり非力であるということを除けば、基本的には素のAndroidです。過去の他サイトのレビューでは日本語化が必要だったという記述も見かけましたが、私の個体ははじめから日本語を選択できました(そこがまた怪しいのですが)。


特殊なアスペクト比、というより幅の狭さが原因で、デフォルトの表示サイズでは一部UIが詰まりすぎて崩壊気味です。これは表示サイズを「小」にするか、開発者オプションで最小幅を変更すれば回避できます。
この謎ROMにはせっかく搭載されているIRブラスターを使えるアプリがないのですが、Playストアから「Mi Remote controller」というXiaomi公式のアプリをダウンロードすれば家電リモコンとして使えます。
最後に。中身がめちゃくちゃだったのはともかく、唯一無二の絶妙なサイズ、無印良品的な質感の外装など、ハード面では魅力を感じました。ガワはこのままでもう少しだけ性能が良ければ……と思うと、あらためてProject Gemが形にならなかったのは惜しいと思いますね。