• HOME
  • コラム
  • M570t/MX ERGOユーザーが語る、待望の後継機「ERGO M575」への期待

M570t/MX ERGOユーザーが語る、待望の後継機「ERGO M575」への期待

2020年10月28日、ロジクールから親指操作型トラックボールの新作「ERGO M575」が発表されました。2010年発売のロングセラー製品「M570」シリーズの後継モデルとアナウンスされており、まさに待望の新機種という感じです。

もちろん私も買います。たぶんレビューもします。でも、発売まであと1ヶ月も黙っていられないので、とりあえず発表内容を見て新機種への期待を語っておこうと思います。

「ERGO M575」の概要


「ERGO M575」は、親指操作型のワイヤレストラックボールです。発売予定日は2020年11月26日、ロジクールオンラインストアでの価格は6,050円(税込)です。

先述の通り、M570シリーズ(M570t/SW-M570)の後継機であり、製品名称からはフラッグシップモデルである「MX ERGO」の下位モデルといったニュアンスも読み取れます。つまりは普及価格帯の親指トラックボールの新作ですね。

親指操作型というスタイルは大きく変えず、操作精度の向上、スクロールホイールの角度やクリックエリアの見直し、解像度を最大2000dpiまで調整可能など、肝となる操作性の向上に力を入れたようです。

Logitech International本社の「Ergoラボ」で人間工学に基づいてデザインしたというボディは、MX ERGOの流れを汲むエルゴノミック形状となっています。「手のひらをしっかり支える形状なので、長時間使用しても疲れにくい」とされており、角度調整機構こそありませんが、MX ERGOのような右向きの傾斜がつけられています。

接続方式は従来のUnifying USBレシーバーに加えて、Bluetoothにも対応しました。充電池は内蔵せず、M570シリーズと同様に単3電池で動作します。

大きさは約134×100×48mm、重さは約145g(電池込み)。カラーはグラファイト、オフホワイト、ブラックの3色展開となります。

Source:ロジクール

MX ERGOがあってもM570シリーズを使い続けてきた理由


立場が違えば意見も違って当然だと思うので、「こういうユーザーから見た評価だよ」というのをはっきりさせておくために私のトラックボール歴にも触れておきます。

トラックボール歴は9~10年。最初に買った機種はtが付く前の初代M570、今はM570t(たぶん4台目ぐらい)とMX ERGO(2台目)を併用しています。M570tもMX ERGOも今年新調したばかりなのでまさかの新型が出てちょっと悔しいですが、少しでも売上に貢献して新型に繋げられたのならそれで良いとも思っています。

他にも、エレコムのEX-G、Digio2 Q、ケンジントンのPro Fit Ergo Verticalなど、トラックボールを使い始めてから日本で出た親指タイプの主要モデルは割と買ってきたと思います(EX-G PROはスルーしてしまったのと、サンワサプライは微妙そうで手を出さなかったくらいでしょうか)。


いつ市場から消えてもおかしくないニッチなポインティングデバイスだった時代を多少なりとも知っている者からすると、やっぱりロジクールのフラッグシップであるMXシリーズの一員としてMX ERGOが登場してから、風向きもユーザー層も変わったと思います。

手首の疲れを軽減できて云々という古くからマニアが力説してきたメリットを、とても洗練された現代的なエルゴノミックデバイスという文脈で再定義し、「古臭いオタクが使う物」から「画期的な最新デバイス」に生まれ変わらせたからこそ、感度の高い人々の関心を引くことができました。トラックボールなんて使ったこともなかった人(下手したら知らなかった人)が「MXからなんか変なのが出たぞ」と興味を持っていきなり最高レベルの物に触れることができたのは、きっと素晴らしい体験だったでしょう。

そういう意味ではMX ERGOは偉大な製品ですし、あれが無ければERGO M575も当然なく、まだ今も旧式のM570シリーズを延々と実質値上げの型番変更で売り続ける(そして、それしかないから買わざるを得ない)過疎ジャンルだったでしょう。


そんなわけでMX ERGOの存在には感謝していますが、実のところ、製品自体はそれほど好きではありません。2台目を買い直すレベルで発売以来使い込んできたので、好きじゃないと言っても説得力はありませんけどね。

MX ERGOは他のMXシリーズから入った人にとっては革新的なデバイスだけど、MX ERGO以前からの親指トラックボールユーザーが心から求めるものではないというのが個人的な評価です。

別に気取ったエルゴノミクスなんちゃらに興味はないし、角度調整のギミックも邪魔(不意にガタンと崩れるのが嫌で、3Dプリントしたスペーサーでずっと埋めて使っていたぐらい)。見た目は高級っぽいラバー塗装は1年も使い込めばボロボロ、ソールも剥がれやすい。おまけに角度調整ギミックに関しては重さと形状の両面で持ち運びの邪魔にもなりますし……あとUnifyingレシーバーを収納できないのは何を考えているのか。

このように、実用性重視のヘビーユーザーから見ればMX ERGOも意外と完璧には程遠いものです。高級機のくせに長持ちしないのは道具としては正直微妙ですよね。ただ、不満は多々あれど、設計が古く価格帯も違うM570とは違う便利さは当然あります。特にチルトホイールやLogicool Flowや減速ボタンは便利で、悔しいけれどこれはこれで手放せません。


逆にMX ERGOに無くてM570シリーズにあるものを挙げるとすれば、ガンガン使い潰せる安さ(年々高くなっていますが)、背が低いので使い慣れた者としては案外こっちの方が疲れない、軽くて持ち運びも行ける、とかですかね。

M570シリーズはさすがに古さを感じる部分も多いけど、MX ERGOでは全ての場面で代わりが務まるわけではないから使い分けてきた、というのがここ数年の状況です。

「M570にBluetoothとチルトホイールだけ付けばそれでいいのにな」と何度思ったか分かりません。他社製品も色々試してはみましたがやっぱりロジクールなんですよね……これほどモデルチェンジを待ち望んでいた製品は他にないかもしれません。

ERGO M575への期待

実質10年ぶりのモデルチェンジということで、よほどのことがない限り前作を下回ることはないでしょう。とりあえず思考停止で買い替えればいいんだと思いつつ、一応分析してみましょうか。

良さそうな点
・Bluetooth対応
・電池もち
・MX ERGOの角度を固定したような形状

良い方から見ていくと、まずはなんと言ってもBluetooth対応が素晴らしいですね。これを待っていた。最近はUSB Type-C端子しかないノートPCも珍しくありませんし、iPadのマウス対応などもあってタブレットで使いたい人もいるはず。Unifying専用だと何かと不便でした。

乾電池駆動というのはM570シリーズから変わりませんが、充電池を内蔵してしまうと価格も上がりますしバッテリーの寿命が本体の寿命になってしまうので、これも悪くないでしょう。どうしても充電式にしたい人はエネループでも入れておけばいいわけで。

M570の電池もちは最大18ヶ月とされていましたが、M575はUnifyingで24ヶ月、Bluetoothで20ヶ月使えるそうです。同じ電池なのにこんなに伸びるって、さすがに10年分の差を感じますね。


これは触ってみないとなんとも言えませんが、MX ERGO譲りの新しいボディ形状はなかなか使いやすそうに見えます。3辺の寸法だけ見ると少し大きそうなのが気になりますが、MX ERGOから変形ギミックを抜いたような形状ですよね。MX ERGOの形状自体はまあまあ使いやすいのに、あの磁石と金属プレートを使った雑なギミックが邪魔だと常々感じていたユーザーとしては期待せざるを得ません。

イマイチな点
・チルトホイールじゃない
・減速ボタンがない
・Logicool Flowには非対応?

チルトホイールがないことにはがっかり。今時安いマウスでも横スクロールぐらい対応している製品は多々ありますし、エレコムやサンワサプライの同価格帯より少し安いトラックボールでも付いてるのになぁ……。

減速ボタンやマルチデバイス、Logicool FlowあたりはMX ERGOとの差別化ポイントでしょう。まあ、お値段も半分ですし仕方ない。

期待したい点
・メンテナンス性
・新ボールの性能
・変に劣化しない塗装

この3点は、実物を見てからのお楽しみ。「こうだったらいいな」「ここは要チェック」という話です。

まずメンテナンス性。MX ERGOはトラックボールには必須の「玉を外して清掃する」という作業がとにかくしにくく、素手では取れず何か細い棒を用意しないといけないという理解不能な作りでした。掃除するのは大抵動きが悪くなってからなので、使えないイライラに外せないイライラが上乗せされます。ERGO M575はまともになっているといいですね。


次にボールの性能。M570シリーズともMX ERGOとも違う色なので、おそらく新作でしょう。個人的にはMX ERGOの灰玉よりはM570の青玉が良い気がしています。公式サイトを見ると滑らかなコーティングや内部の詰め物による慣性など結構こだわっているようですが、どんな感じでしょうね。

最後に、劣化しない塗装。まあ普及機なのでラバー塗装などはしないでしょうから大丈夫かな……?ホワイトは質感によっては黄ばみが激しそうなので、どういう仕上げなのか気になるところです。

まとめ


何はともあれ、10年ぶりのモデルチェンジに感謝。次は10年も待たず5年ぐらいで新型が出る程度にはトラックボールというジャンルが栄えるといいですね。

「M570にBluetoothとチルトホイールを付けた新型を出してくれ」という願いは半分だけ叶いましたが、贅沢を言っても他があるわけではないのでとりあえず全色買います。

追伸:諸々の欠点を解消したMX ERGO 2も出してほしいです。

「ERGO M575」をAmazonで見る

関連記事