
Tiger Lake搭載最新モデル「XPS 13 (9310)」ファーストインプレッション
2020年10月2日に発売されたDELLの新型ノートPC「XPS 13(9310)」を購入しました。発売から3週間ほど経ちますが、海外発送で納期が2~3週間かかるということもあって、まだ国内での入手報告はあまり多くありません。
ベンチマークテストによる性能比較などは専門のPCレビュアーの方々に譲りますが、せっかく発売直後に入手したので簡単に紹介しておこうと思います。
「XPS 13(9310)」ってどんな機種?
XPSシリーズのノートPCは、DELLの個人向け・非ゲーミングモデルの中ではフラッグシップ的な扱いで、Inspironシリーズの上位機種です。特に、狭額縁設計の導入で世界最小(当時)の13インチノートPCとなった2015年モデルの「New XPS 13 Graphic Pro(9343)」以降の人気は高く、看板モデルとなっています。
3辺狭額縁の新デザインでデビューした2015年モデル以降、XPS 13は9343→9350→9360→9370→9380→7390とモデルチェンジを重ね、プロセッサの刷新やさらなる小型化を進めてきました。そして2020年に入り、CES 2020でXPS 13(9300)が登場。ついに4辺狭額縁となり、これまで以上にコンパクトに生まれ変わりました。
ただ、9300の時点ではIntelの10nm化の遅れもあり、性能的には3辺狭額縁時代の最終モデルとほぼ変わらないものでした。今回発売されたXPS 13(9310)は、9300から受け継いだボディに、ようやく製品化された第11世代(Tiger Lake)のCore iシリーズを搭載。Intel Evo Platform準拠の最新ノートPCです。
Intel Evo Platformってなに?という話をすると長くなりますが、ざっくり言えばかつての「Centrino」や「Ultrabook」のようなものです。Intelが考えるこれからの薄型軽量ノートPCの基準を満たしていますよ、ってやつですね。
XPS 13(9310)は発売直後のため、まだ選択できる構成が限られています。10月23日時点では、「CPUはCore i7のみ」「メモリは16GBまたは32GB」「SSDは512GBまたは1GB」「画面はFHD(非タッチ・非光沢)または4K(タッチ・光沢)」「JISキーボードまたはUSキーボード」「Officeの有無」「ボディカラー(シルバーまたはフロスト)」を選択できます。
私が注文した10月9日の時点ではまだ32GBメモリを選択できなかったので、使用モデルの構成はCore i7-1165G7/メモリ16GB(LPDDR4x 4267MHz)/SSD 512GB(M.2 NVMe)/FHD+非光沢液晶です。買う時期ミスりましたね。まさかこんなすぐに32GBが選べるようになるとは思いませんでした(この記事を書こうとしなければ気付かなかったのに……)。
ただ、メモリ32GBを選択するとディスプレイが4K光沢タッチしか選べないのは悩みどころですね。
なんで買ったの?

2018年1月、XPS 13(9370)発表会で撮影
私はここ数年、メインのノートPCとしてはThinkPad(Lenovo)かXPS(DELL)、gram(LG)を選んでいます。性格は違いますが、それぞれに選ぶ理由があり、ThinkPadはキーボードが最高、gramは軽い上に中身を好き勝手に弄れる(現行ThinkPadより自由かも)といった具合です。
XPSを選んでいる理由はなんだろう……かっこいいからかな?急に適当な理由になったと思われそうですが、言い換えれば「用がなくても常に持ち歩く気になれる」マシンなので、かっこいいから買っていると言うのもあながち間違いではないかもしれません。
冗談はほどほどにしてまともな理由を挙げるなら、DELLは最新世代のプロセッサを搭載する製品を日本に持ってくるのがめちゃくちゃ早いんですよね。今回も日本国内で買えるTiger Lake搭載機としてはほぼ一番乗りのはずです。これがLenovoだと、発表から発売までのラグもありますし、そもそもYogaシリーズあたりから積み始めてThinkPadは最後になるのがお決まりのパターンなので、CPUの世代交代が絡んでいる時期の買い替え先としては選びにくいのです。
あと、対抗馬として検討していたThinkPad X1 NanoはTiger Lake UP4っぽいから(UP3の)XPSにしたという理由もあります。
UP3とかUP4とか急に言われてもTiger Lakeに興味津々でよく調べている人以外は何のことやらだと思いますが、雑に言えばUP3は従来のUプロセッサ、UP4はYプロセッサにあたります。UP4は超低電圧版相当ということですね。ただし、Tiger Lakeの設計上、筐体の熱設計次第でパフォーマンスが大きく変わるので、一概に「UP3だから速い、UP4は遅い」とは言えないのですけれども。
開封・付属品チェック
以前は薄い箱でACアダプターは別添でしたが、なんだか高級感のある立派なパッケージに変わっていました。
箱を開けるとまずは本体が登場。その下に充電器などが入っています。
付属品はACアダプタ(USB Type-C接続)とUSB Standard-Aの変換アダプタ。ACアダプタは電源ケーブルが別でちょっとかさばるので、モバイルするなら別の充電器を用意した方が使いやすいでしょう。ちなみに、出力が足りない充電器を接続した際の警告によると、27W以上のUSB PD対応充電器なら一応充電できるようです。
外観:ベゼルレスの美しいノートPC
外観は基本的に9300と同じです。天板と底面はアルミ削り出し、側面には光沢のあるヘアライン加工が施されています。
XPSの底面はWindowsノートPCではトップクラスの美しさだと個人的に思っています。普段は見えない部分まで見た目にこだわっているのが伝わってきます。
端子類はかなり割り切った仕様。左側にはUSB Type-C端子とmicroSDカードリーダー、右側にはイヤホンジャックとUSB Type-C端子があります。最低限の数に絞りつつも、左右両方にUSB Type-C端子が残されているのは扱いやすく評価できるポイントです。
シルバーモデルはキーボード周りがカーボンファイバー、フロストモデルは白のグラスファイバーとなります。
フロストのグラスファイバーは旧型の頃から「白いけど経年で黄変しない」とアピールされていて、家電量販店などの展示機を見ていても確かに美しい状態を保てているとは思います。ただ、パームレストは黄ばまなくても白いキーボードはやっぱり……とどうしても思ってしまい、無難なシルバーにしました。
最近はフロスト/ホワイトがイメージカラーになっていますが、締まって見えるシルバー/ブラックもやっぱりかっこいいです。
3辺狭額縁時代のXPS 13は、JISキーボードを選択すると右側の記号部分からEnterキーにかけて無理やり詰め込んだような細長いキーになっていて、打ちにくい・位置を掴みづらいのが難点でした。9300からはボディの横幅を限界まで使ってキーボードが拡大され、均等な使いやすい配置になりました。
キーボードの右上にはWindows Hello対応の指紋センサー兼電源キーがあります。
こういう配置だと脊髄反射的に「押し間違えてスリープしてしまう」と言い出す頭の固い人がよくいるのですが、大抵の機種は他のキーより一段低くなっていたり固さが一般のキーとはまったく違ったりするので、ミスタイプ程度でそんなことが起きるというのは実用上はほぼ考えられません。XPS 13に関しても、そのような心配はないでしょう。
ちなみに、シャットダウンしてフタを閉じておくと、次回開いた時に電源ボタンを押さなくても自動で起動する機能があります。掃除したい時などにはちょっと邪魔なので良し悪しですかね。
4K光沢モデルはディスプレイのある面の隅まで1枚のガラスで覆われていて、FHD非光沢モデルには樹脂製の枠があるというのは3辺狭額縁時代と同じです。ただ、ベゼル自体が極小な上に画面との段差も減っているので、近寄ってじっくり見なければ4K光沢モデルとのデザインの違いには気付きにくいでしょう。
使ってみた感想
新型を使い始めて、第一印象は「やっぱり16:10の画面はいいね」でした。こうしてブログを書いているのもそうですが、テキストベースの作業が多い人には縦方向に画面が広いというメリットは大きいと思います。欲を言えばSurfaceシリーズのように3:2ならなお良いです。
そして、XPSユーザーにしか伝わらないあるあるネタですが、気にしている人も多いであろう「コイル鳴き」はなさそうです。これは本当に良かった。当たり個体なのか機種全体として改善されてるのかは1台だけでは判断できませんが、似たような設計であろう前モデルの9300でもコイル鳴きはしないという口コミが多く、ようやく対策されたのではないかなと思います。
以前持っていた9370やレビュー用にお借りしたことがある9360は、コイル鳴きに加えて冷却ファンも爆音で、「見た目はスタバでドヤ顔系ノートPCなのに、色々うるさすぎて静かな場所で使うのは気が引ける」という印象でしたが、9310は高負荷時にファンが回っても意外と静かです。
CPU温度はそれなりに上がっていてキーボードや底面に熱が伝わってくることもありますが、Dell Power Managerのサーマル管理を初期設定の「最適化」にしている分には、排熱が追いつかず性能が落ちるという感じではありません。あとは夏場にどうなるかですね。
このモデルに搭載されているCPUは、4コア8スレッド+Iris Xeグラフィックスの「Core i7-1165G7」。Tiger Lake-UP3の上から2番目のSKUです。
試しに、主にCPU性能を測るベンチマークソフト「CINEBENCH R20」を少し回してみましたが、最適化モードで1900点台、サーマル管理を「超高パフォーマンス」設定で全開にすれば2000点を超えたので、Ice Lake-UのCore i7搭載モデル比で2~3割はCPU性能が上がっているようです。
Tiger Lakeは各メーカーの熱設計に実際のパフォーマンスが大きく左右されると聞きますから、この機種が相対的にどうなのかはもう少しTiger Lake搭載機が出揃ってきたら知りたいところです。
ちなみに、最適化モードのバッテリー駆動とACアダプタ接続時でも測り比べてみましたが、ほぼ差はありませんでした。Ryzen搭載ノートPCなどはバッテリー駆動とAC駆動でパフォーマンス制御がはっきり違うようですが、Intel Evo Platformに「電源を問わずレスポンスが良い」という要件があることも考えると、Intel的には意図的にパフォーマンスを落としてでもバッテリー駆動時間を伸ばすよりは、いつでも同じ性能を発揮できることを重視しているのかもしれませんね。
外観の項目でも少し触れましたが、キーボードは前モデルの9300から本体の幅いっぱいに広がってキーピッチが均等になりました。最近のモバイルPCらしくキーストロークは非常に浅く、ペチペチと大きめの打鍵音が出ますが、打ちづらくはありません。小気味良く打てる12インチMacBookのような性格です(あれは本当に不思議なぐらい打ちやすいので、同じとは言いませんが)。
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余談:新しいPCが届いたらしっかりチェックしよう
さて、一通り良い機種っぽく紹介してきましたが、そろそろオチをつけましょう。実はこれ、不良品なんです。
写真ではまず分からないと思いますが、触ると何かがおかしい。なんだろうとじっくり確認してみると、どうやら天板が左にちょっとズレているようで噛み合わせが悪く、閉じた状態で側面を触ると段差があり、真横から見たり天板を上から押したりしてみると、右側だけ微妙に閉じきっていませんでした。
2年前に買ったXPS 13(9370)はヒンジが緩めでしたし、DELLってどうもカッコいい物を作る割にビルドクオリティが追い付いていないんですよね……。今回は些細な不良ですし、この程度で片言のサポート窓口とバトルするべきかどうか、ちょっと迷っています。