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AQUOS zeroシリーズファンが「AQUOS zero5G basic」に思うこと

2020年9月11日、シャープの2020年秋冬モデルとなるスマートフォン4機種が発表されました。そのうちの一つである「AQUOS zero5G basic」について、AQUOS zeroシリーズを好んで使ってきたファンとしての感想を書き残しておきたいと思います。

はじめにお断りしておくと、同機種の購入を検討されている方向けの解説記事ではありません。気分を害する可能性もありますので、そのような情報をお探しであれば、もっと有益な他の記事をあたってください。

第2のフラッグシップとして生まれた「zero」シリーズ


AQUOSのフラッグシップモデルといえば「R」シリーズで、こちらはドコモ向けの「ZETA」、au向けの「SERIE」、ソフトバンク向けの「Xx」を統合する形で2017年に生まれました。鴻海傘下の新体制に移行した時期と重なり、普及価格帯の「sense」シリーズとともに、ブランドイメージの確立とシェア回復に貢献してきたフラッグシップモデルです。

すでにAQUOS Rシリーズが定着していた2018年、「zero」シリーズが突如登場します。万人向けの高性能・万能端末であるRシリーズに対して、zeroシリーズはかなり尖ったコンセプトで通好みの端末。キャラクターの異なる第2のフラッグシップモデルとして、いつしかラインナップに定着していきました。

これまでの「zero」はどんな機種だったか

私はAQUOS zeroの開発発表時からそのコンセプトに魅了され、初代、2代目(AQUOS zero2)と定価で購入してきたファンです。

2018年も今もあまり状況は変わらないと思いますが、どのメーカーもフラッグシップモデルはカメラ性能が売りで、大艦巨砲主義のような「果たしてそれは本当に需要があるのか」と思ってしまうような利用シーンや実生活におけるメリットを感じにくい機能ばかり増えていく……そんな退屈でマンネリ化したスマートフォン市場の中で、当時のAQUOS zeroは異彩を放っていたのです。


初代AQUOS zeroは当時のハイエンドSoC「Snapdragon 845」を搭載しながら、シングルカメラで目立った先進機能もなく、6.2インチで146gというストイックに限界まで削ぎ落とされた軽さだけが取り柄のスマートフォンでした。

この潔さに惹かれましたし、「本当は長時間使うヘビーユーザーにこそ軽いスマホが必要なのに、年々重くなっている」という開発者の方々の着眼点も素晴らしく、トレンドへのアンチテーゼとも言える仕様に惚れ込みました。

軽さだけが取り柄と書きましたが、一応「自社製有機ELを初搭載」「120Hz高速表示」「両端だけを丸めるのではなく全体を緩やかにカーブさせた、高コストなこだわりの特殊ディスプレイ」などの見どころもありました。軽量化のために採用されたアラミド繊維製の背面パネルにもオタク心をくすぐられました。

発表直後に購入を決意し、後からソフトバンク独占販売と分かり落胆し、欲しくもないソフトバンク回線を契約してまで購入し、後出しでSIMフリー版を出されて苦笑。そんなことも今となっては良い思い出です。

初物の自社製有機ELの品質は酷いものでしたし、カメラはとても2018年の10万円クラスの機種とは思えないぐらいお粗末な写りでしたが、それを差し引いても唯一無二の存在であり、製品としての出来は落第点だなと思いつつ不思議と愛着が湧く機種でした。


そして1年後。あんな一発屋としか思えないキワモノだったAQUOS zeroにまさかの後継機が登場しました。軽量、有機EL、高速表示という特徴はそのまま。しかも、初代の反響を受けて今度は3キャリアに投入されるという大出世です。

「AQUOS zero2」はSnapdragon 855を搭載し、超広角カメラを追加。背面は残念ながらアラミド繊維ではなく樹脂製になってしまいましたが、画面サイズを6.4インチに拡大したにも関わらず初代よりも軽いのです。発表当初は143g(予定)、発売直前になってさらに軽量化されて141gになるという、執念が垣間見える演出も熱かったですね。

もちろん、発売されてすぐに買いました(今度はドコモで)。背面パネルはすぐに小傷だらけ、有機ELの品質は相変わらず怪しげ、画面内指紋認証がやたら遅いなど、出来は相変わらず……。でも、2周目となると「こまけぇこたぁいいんだよ!!」「素人は黙っとれ」という謎の感情が芽生えてきます。


個人的な意見ですが、zeroシリーズはやはり万人向けの全部入りハイエンドではありませんし、良さが分かる人、理念に共感できる人以外は買うべきでない機種だと思います。「お気に入り」だけど「おすすめ」ではないんですよね。

スペックだけ見て安いからとか、ろくに調べもせず買うと間違いなく後悔します。えぇ、2万円になった途端に飛び付いてブーブー文句を垂れている人たちに言ってるんですよ。


それから販売戦略上はゲーミングスマホのふりをしていますが(特にzero2)、ゲーミングスマホが欲しい人は、悪いことは言わないのでROG Phoneシリーズを買った方が良いと思います。

ソフトウェアの機能面でもアクセサリーの拡張性の面でも、本当にゲーミングスマホとして作られた機種には到底及びません。社内を説得して軽量ハイエンドスマホを作るために取って付けたようなゲーミングアピールをしているのではないかと勘ぐっています。

「AQUOS zero5G basic」に受け継がれたものと失われたもの


長々と“これまでの”zeroシリーズへの愛を語ってきましたが、そろそろ本題の最新機種「AQUOS zero5G basic」の話をしましょう。

一言で言えば落胆しています。これのどこがzeroなのか。

正直、今シーズンはzeroはないと思っていました。5G対応の軽量端末を作るのはまだ無理でしょうし、そもそも薄さや軽さを売りにした製品は技術が成熟してきたフェーズで出てくることを3G以前の歴史が証明しています。5Gが始まったら、また枯れた技術になるまではzeroのような機種は作れないはずです。zero2で一花咲かせて幕引きとなるのが筋でしょう。

まさか、これまでとの共通点を探すのが難しいぐらいの別物をzeroとして投入してくるとは……。打ち切りよりもよほど残酷、これでzeroと名乗るのは既存ファンへの裏切りとすら思えます。

どんな機種が発表されたのかは以下の記事で。

世に放たれてしまった以上はもう何を言っても仕方ないので、ひとまずAQUOS zero5G basicに受け継がれたもの、失われたものを整理してみましょう。

まず、これまで建前として名乗ってきた「ゲーミング(風)」要素は受け継がれていると思います。タッチ操作のレスポンスを高め、ハイエンドではないながらも快適にゲームをプレイできるように作られています。

それから、「有機ELのAQUOS」というポジションも受け継いでいます。プレスリリースでは自社製とは明言されていないようですが、そこはどうなんでしょうね。

一方、失われたのは「軽さ」。約182gです。まあ、現状の5G端末としては特に重くはないのですが……。全体的に没個性で、凡庸なセカンドラインに成り下がってしまったなという印象です。

今求められている製品ではあるけれど、zeroを名乗って欲しくなかった

「似ても似つかないものがzeroを名乗っている」「zeroシリーズの事実上の死」という点においては非常にネガティブな印象を受けましたが、物自体は今の日本市場に必要なポジションの機種で、上手いところを突いてきたなと思っています。

プレゼンテーションの中で、AQUOS zero5G basicのターゲット層として「なんとなくハイエンドを選んできた人」というのが挙げられています。その層に向けた機種が今まさに必要だというのは強く共感しました。

的外れで迷惑な横槍のせいで端末代金(負担額)の実質的な値上がりが起きてしまっている今の日本市場では、これまでさほど意識せずに良い物を使ってこられた人々(なんとなくハイエンド組)を手頃な価格で満足させられる受け皿となり得る機種が間違いなく必要です。

先日、別の機種のレビュー(※関連記事)でちょうど同じような話をしました。今の最先端のスペックまでは要らないけれど、ハイエンド端末に慣れた人でも快適に使えるだけの性能があり、十分満足できる機能がある……そんな「ハイエンドじゃないけどフラッグシップ」な機種は今後増えていくのではないかなと思っています。

着眼点の鋭さ、必要とされる製品をタイミング良く投入できる開発体制という点では、シャープのスマートフォン事業はやっぱり鴻海傘下に入ってから非常に良い方向に変わったなと思います。この機種がもし「AQUOS R5G basic」あるいは「AQUOS sense5G premium」的な位置付けで生まれていたら、素直に歓迎できた気がします。

Source:公式サイト

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