
楽天モバイル(Rakuten UN-LIMIT)の速度制限1Mbps化は諸刃の剣か
楽天モバイルは4月8日、無料サポータープログラムとして提供してきたMNOサービスを、正式プラン「Rakuten UN-LIMIT」として提供開始しました。
そして、提供開始と同時に2つの仕様変更も発表。事前に発表されていた内容では、「パートナー回線エリア(auローミング)では月2GBまで、超過後は128kbpsに制限」という仕様でしたが、発表から開始までの反響を受けてか、「パートナー回線エリアでは月5GB、超過後は1Mbps制限」に緩和されました。
当初の仕様では楽天の自社回線がまだ行き渡っていないエリア(東京・大阪・名古屋以外)では事実上2,980円/2GBのプランになってしまい、無料期間が過ぎた後は勝負にならないのでは?という懸念がありました。2,980円/5GBならMNOとしては十分安く、複雑な割引条件を満たす必要なくこの値段で使えるなら悪くないのではないでしょうか。
そんなわけで、8日に発表された「2GB→5GB」「128kbps→1Mbps」という2つの改善点のうち、前者に関しては意義があると個人的には思いました。一方で、パートナーエリアでのデータ容量を使い切った場合にかかる速度制限を緩めてしまったことには良くも悪くも大きな効果があるだろうと思います。
良い効果としては、MVNO時代に獲得した既存ユーザーの移行を後押しできることが挙げられます。
楽天モバイル(MVNO)の「スーパーホーダイプラン」は速度制限が1Mbpsと競合他社に比べて緩めなことが特徴のひとつでした。この「速度制限がかかってもそれなりに使える」ということを目当てに楽天モバイルを選んだユーザーは相当数いるようで、実際、Rakuten UN-LIMITが発表された際に「1Mbps制限だから楽天を選んだのに」「これ(128kbps制限)なら移行は見送りかな」といった反応もSNS上では散見されました。
悪い効果としては、速度制限を緩和したことで、auローミングの使用量に制限を設けた意味がなくなるというリスクがあります。
そもそも、無料サポータープログラムの時点では楽天回線でもau回線でもデータ通信量は無制限でした。サポーターの使い方を見て再考した正式プランでは制限を設けた理由は単純で、KDDIに支払うローミング利用料を考慮するとそちらでたくさん通信されては商売にならないからです。当然、低速で通信されてもそのコストはかかるわけで、先にも書いた「速度制限がかかってもそれなりに使える」というのは、ユーザーは助かるけれど楽天モバイルにとっては悩みの種になるでしょう。
「低速でもいいから少しでもお金をかけずに大量に通信したい」という利用スタイルのユーザー層は我々の想像以上にいるようです。具体例を挙げれば、「OCN モバイル ONE」が2019年12月に新コースを発表した際に明かした背景はとても考えさせられるものがありました。簡単に言えば、この層の存在に悩まされ続け、大多数のユーザーの快適な利用環境を損ねないために「低速制限後の超低速制限」を設けたという話です。楽天モバイルも、今後の利用動向や懐事情によっては再度プランを練り直す必要が生じる可能性は大いにあると思います。
