
「Pixel 4」レビュー、待望のMotion SenseやモバイルSuica&PASMO両対応で魅力が増した今こそオススメ
発売からずっとメイン機として使ってきたお気に入りの「Pixel 3a」もだいぶバッテリーがヘタってきたので、「Pixel 4aが出たら買い替えよう」と思っていたのですが、予定通り発売されても5月後半でしょうからあと2ヶ月もありますし、発表の場となるであろうGoogle I/Oも昨今の情勢を踏まえて中止になってしまいました。生産だってどうなるか分かりませんし、これはちょっと待てないなあ……ということで、渋々「Pixel 4」を購入。
下位モデルの購入を諦めて上位モデルを渋々買うなんて、どこかおかしな話のように聞こえるかもしれませんが、少なくとも先代ではPixel 3よりPixel 3aの方が出来が良くて安定している部分が多々ありました。
それに、私は一時期「Pixel 4 XL」も使っていて、このブログでレビューしました。不格好な上に11万円を超える価格に見合った性能も機能もない、というのが発売直後の印象。それでも今回Pixel 4を選んだのは、XLではなく通常サイズなら仲良くやっていけるかもしれない、価格も未使用品で7万円ならまあ悪くない、そしてこの数ヶ月でPixel 4の価値が上がる出来事がいくつかあった、という理由です。
そんなわけで、一度は見切りを付けたPixel 4シリーズをサイズ違いとはいえ再び手に取り、1週間ほど使ってみた結果を踏まえて再レビューします。


「Pixel 4」ってどんな機種?
「Pixel 4」は、Android OSの本元であるGoogle自身のブランドで展開されるスマートフォン「Pixel」シリーズの4世代目。2サイズ展開で、今回紹介する5.7インチの「Pixel 4」のほかに、6.3インチの「Pixel 4 XL」があります。いずれも、元HTCのスマートフォンチームがGoogleで開発した機種です。
Pixelシリーズは比較的Android標準に近いソフトウェアを搭載しており、最新バージョンのAndroidをいち早く体感できる機種でもあります。機能面では、Googleが持つAI技術、画像処理技術をフル活用してカメラに力を入れています。また、Pixel 4では新たに、画面に触れずに操作できるジェスチャー機能「Motion Sense」が搭載されました。
外観:Pixelらしい独自路線を歩むデザイン
まずは外観からチェック。先にレビューしたPixel 4 XLと変わらない……というか、カラーも同じClearly Whiteを選んでしまったので大きさしか変わらないのですが、あらためて見てみましょう。背面はすべすべした触り心地の良いすりガラスで、フレームはマット仕上げのブラック。ギラギラした最近のハイエンドモデルのトレンドとは別の独自路線を歩んでいますが、親しみやすくPixelらしいデザインではあると思います。
カメラは左上の黒い四角の中に収められていますが、配置だけを見れば似ているiPhone 11シリーズとは対照的に、個々のカメラをあえて目立たせず平面のガラスで覆ってブラックアウトさせています。大きく主張の強い物になりがちな多眼カメラをさり気なくまとめていて、カメラユニットと本体の角の統一感、Googleロゴの配置なども整っていて、背面だけを見ればとても端正な佇まいのスマートフォンだなと思います。
前面は……正直コメントしたくないぐらい嫌いですね。背面のデザインは大好きなのに……。
画面配置を偏らせて上側のベゼルだけを残すのは見た目も美しくありませんし、重量バランスが崩れたり下端ギリギリまで指を伸ばす必要が出てきたりと実用上のデメリットも出やすいです。ただ、Pixel 4 XLよりは30g以上軽いですしサイズも小さいので、このあたりの不都合は感じにくいですね。Pixel 4 XLの大きさ、重さでこのバランスの悪さは使っていて苦痛でした……。
「偏り」以外でもう1点しっくりこないのが、画面の角の処理。本体の角と曲率を揃えているのは分かりますが、実際のUIと組み合わせた時にコーナーの丸みが強すぎて不格好になる場面が多いのです。通常のOEMベンダーのAndroid端末ならともかく、他ならぬGoogleがなぜこんなハードウェア先行のデザインにしてしまったのかは疑問が残ります。

右側には電源キーと音量キー。電源キーだけワンポイントで色が違います。

左側にはSIMカードトレイ。nano SIMが1枚入り、microSDには非対応です。

上部にはマイクのみ。

下部にはスピーカーとUSB Type-C端子。
サイズの話をしておくと、Pixel 3との比較では5.5インチ/145.6×68.2×7.9mm/148gから5.7インチ/147.1×68.8×8.2mm/162gなので、画面サイズは拡大されましたが本体サイズはほぼ変わらず、重量は若干アップ。元々Pixel 3が軽めだったので、Pixel 4でも最近のハイスペック機としては軽い部類でしょう。Pixel 4 XLは6.3インチ/160.4×75.1×8.2mm/193gとなかなかのヘビー級。
スペック・動作:値段相応に快適、弱点は電池持ち
Pixel 4のスペック表 | |
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SoC | Snapdragon 855 |
RAM | 6GB |
ROM | 64GB/128GB |
外部ストレージ | × |
画面サイズ | 5.7インチ |
画面解像度 | FHD+ |
バッテリー容量 | 2800mAh |
充電端子 | USB Type-C |
OS | Android 10 |
アウトカメラ | 約1220万画素 F1.7(77°)+約1600万画素 F2.4(52°) |
インカメラ | 約800万画素 F2.0(90°) |
サイズ | 約147.1×68.8×8.2mm |
重量 | 約162g |
Pixel 3まではメモリの少なさが指摘されていましたが、メモリ6GBでSnapdragon 855を搭載するPixel 4の動作は値段相応に快適。ストレージは拡張できないので、128GBモデルを選ぶか、割り切って「Googleのスマホ」らしくGoogleドライブやGoogleフォトなどのクラウドサービスを活用するかでしょう。
スペック面での最大の欠点はバッテリー容量。2800mAhですよ、Snapdragon 8シリーズ搭載機でまさかの3000mAh未満。新品状態ではまだごまかせても、劣化してくるとすぐ厳しい状態に陥りそうです。
スペックの参考としてベンチマークアプリでの計測結果を載せておきます。

(Geekbench 5のスコア)

(3DMarkのスコア)
UI・機能:Motion Sense解禁、モバイルPASMOにも注目



UIは素のAndroidに近いですが、PixelはNexusのような純粋なリファレンスモデルというわけではないので、「Googleが考えるスマートフォン」としての独自カスタマイズが多少加えられています。Pixel 4からはちょっとしたUIカスタマイズ機能が加わりました。機能面では、Pixel 3から受け継がれた“握って操作”の「Active Edge」などがPixelらしい要素。
PixelオリジナルのUIや機能だけでなく、これからAndroid標準になっていくものがいち早く導入されることもあります。最近では、Googleアシスタントの新UIがその例です。
そして、Pixel 4の新機能といえば「Motion Sense」。前面上部に搭載された60GHz帯の「Soliレーダー」を使い、画面に触れずに操作できる機能です。日本では法規制の対応が必要だったため発売当初は利用できませんでしたが、2020年に入ってから解禁されました。
実際に使ってみると、曲送りの操作はうまく反応させるのに少し慣れが必要でしたが、料理中など手が汚れているときには便利でしょう。アラームのスヌーズ操作は「簡単に止められすぎてこわい」ので使っていません。アンビエント表示関連の機能は便利で、近くにいるときだけ表示するようにできるので電池やディスプレイの負担を軽減できますし、手を近付けるだけで通知を確認できます。
Pixel 4自体の機能ではありませんが、関東私鉄ユーザー待望の新サービス「モバイルPASMO」を利用予定の方には最適な機種です。というのも、モバイルPASMOの対応機種自体は多いのですが、モバイルSuicaとモバイルPASMOを併用できる機種はごく一部。Xperia 1/5/8とAndroid One S6、そしてPixel 4/4 XLしかないのです。この中でキャリアを問わず使える機種となると、Pixel 4はモバイルPASMOユーザーの最適解かもしれません。
カメラ:画質は期待を裏切らないが超広角が欲しい
Pixel 4のカメラは、約1220万画素 F1.7(広角)+約1600万画素 F2.4(望遠)のデュアルカメラ。先代までシングルカメラを貫いてきたのでデュアルカメラになったのは大きな変化ですが、4眼、5眼の機種も増えてきている中ではインパクトは薄いかも。多ければ良いというものでもありませんけれどね。
ただ、望遠はGoogleお得意の画像処理で補完しやすい部分ですし、2眼なら望遠より超広角を加えた方が可能性が広がったであろうことは惜しまれます。
以下、作例はクリックして大きいサイズで見られます(サイトの仕様上、原寸ではありません)。
写りはさすがPixel。極端にホワイトバランスや発色、露出が狂うことは少なく、安定してちゃんと撮れる優等生です。
ズームに関しては少し変わった考え方でUIが作られていて、「望遠レンズに切り替える」という操作を明示的にできるようにはなっていません。0.1倍単位で擬似的にズームしていって、どこかで使用するカメラが切り替わるというデジタルズームの中に混ぜ込んだ仕様。ダブルタップで1倍→2倍の切り替えはできますが、Pixel 4の望遠用カメラの焦点距離は2倍には及ばないので、この状態もデジタルズームがかかっているはずです。
こういう仕様にするなら望遠カメラはますます要らなくてやっぱり超広角の方が良かったんじゃ……とも思いますが、「どっちのカメラを使うか」なんてことをユーザーが一々考える必要はなく、「欲しい画角だけ指示してくれれば後はこっちでうまくやります」というのはGoogleらしいUIではありますね。ただ、「やらなくてもいい」のと「やらせない、できない」のは違うので、これはちょっとAndroidよりiOSライクな考え方かなあ、とも。
カメラアプリのUIではもうひとつ、「連写ができない」というのも変わった仕様です。その代わり、シャッターボタンを長押ししている間はショートムービーが撮影され、後からシャッターチャンスを探し出して静止画を出力できます。
これは一見連写よりも打率が上がりそうな仕組みに思えますが、実際には全フレームから高画質出力できるわけではなく、何らかの基準で自動的にシャッターチャンスと推測された数フレームだけに「HDRフレーム画像をエクスポート」というボタンが表示されます。HDRフレームは幅2048px、それ以外の通常はフレームは幅1024pxになってしまうので、シャッターチャンスを正しく推測できる動画(具体的には人間が写っている動画)以外だとあまり使えないのが難点です。
総評:真価が発揮された今こそ再注目すべき機種
発売直後は目玉機能が不在、カメラが取り柄だけど単純な写りではともかく撮影機能では他社ハイエンドに見劣りするというなかなか評価の難しい機種でしたが、発売から5ヶ月経った今、当初よりも魅力が増してきた印象です。
Soliレーダーを利用したMotion Senseという目玉機能が解禁されたことでPixel 4ならではの操作ができるようになりましたし、これでいびつな前面デザインも意味付けされてある程度許せるかもしれません。eSIM対応もPixel 4の特徴ですが、国内でいち早く提供していたIIJmioが、ベータ版から正式版に移行してサブ回線として使いやすいプランを出してくれたおかげで活用の幅が広がりました。そして、ついに登場したモバイルPASMOにも完璧な状態で対応できる数少ない機種です。
価格もこなれてきていて、ソフトバンク版のSIMロック解除済未使用品なら7万円程度、Googleストアでもメール会員向けに15%引きクーポンが配布され買いやすくなっています。真価が発揮された今こそ、再注目すべき機種ではないでしょうか。