
「Xiaomi楽天オフィシャルストア」は本当に“公式”なのか?
2020年3月4日、楽天市場に「Xiaomi楽天オフィシャルストア」なるものがオープンしました。3月10日には@Press経由でプレスリリースが配信され、いくつかの商業媒体にもこの件についてのニュース記事が掲載されたようです。しかし、これは本当に“公式”なのでしょうか。
裏を取った上でそこをはっきり伝えている記事は見かけず、責任あるメディアとしてそれはいかがなものか……というのはさておき、利用を考えている人のために「本当に公式なのか疑わしい点」を整理しました。Xiaomi公式サイドからのアナウンス、あるいは問い合わせに対する返答は執筆時点ではまだないので、この記事は「偽物だ」と断定するものではありません。あくまで、ひとつの判断材料としてお役立てください。
疑問点①:不透明な立ち位置
最も怪しさを感じるのは、オフィシャルストアを名乗りながら立ち位置が極めて不透明なことです。
ストアページの会社概要によれば、運営しているのは株式会社DreamWorks(大阪府)。先述の@Pressで配信されたプレスリリースも配信元とも一致しており、おそらく運営元がこの会社であることは事実でしょう。越境ECなどをやっている会社のようです。
なぜオフィシャルストアなのに、Xiaomiの日本法人と思われる小米日本合同会社(東京都品川区)や、本格上陸する前に一部製品の国内正規代理店を務めていたTJC株式会社ではないのか?という疑問が浮上しますが、ストアページではDreamWorksは販売元ではなく「店舗運営代行者」となっており、注意事項の中で「楽天市場から指定を受けた委託先である株式会社DreamWorksが、当店の店舗運営業務を行います」と説明されています。
なるほど、オフィシャルストアの運営を受託しているんですね……ん?楽天市場から指定を受けた委託先?なぜ楽天が指定するのか、構造がよく分からず疑問が残ります。
さらに言えば、ストアページでは店舗運営代行者がDreamWorks、販売元がHONG KONG SPEED-TRADE NETWORK TECHNOLOGY CO.,LIMITEDとなっているので、「Xiaomiの代理」でも「楽天の代理」でもないんですよね。どうも説明の整合性が取れていないように見受けられます。
疑問点②:公式サイドから一切言及されていない
たとえ店舗運営代行者の立ち位置が不透明でも、複雑なビジネスモデルなのかもしれませんし、公式サイドから「楽天市場でも今日から販売します!」といった案内があれば疑う余地もなく納得するでしょう。
ところが、少なくとも3月15日時点では公式サイドからはこの“オフィシャルストア”について一切言及されていません。公式Twitterでの告知もなければ、公式サイト(mi.com/jp/)からの誘導もありません。そんなこと、あります?
疑問点③:製品のラインナップ
「Xiaomi楽天オフィシャルストア」のラインナップを見てみると、既存の国内正規販路(Amazon.co.jp)で販売されているXiaomi製品のラインナップとは少し違うことが分かります。スマートフォンは「Mi Note 10」のみで、Mi Note 10 Proはなし。一方、自転車の空気入れやワイヤレスイヤホンなど、これまで販売されていなかった商品も楽天市場では購入できます。本当ならAmazonでも売らないのは不思議ですよね。
また、細かいことを言えば各商品ページもどこか公式らしからぬミスが目立っています。Mi Note 10の商品ページを見れば小文字の「mi Note 10」表記や「1億800万画像」「シームフリ」などの謎用語が並んでいますし、ホームセキュリティカメラはストアトップではMijiaブランドの製品画像なのに商品ページではMiロゴです。まあ、中国メーカーの日本語訳が怪しいのは割とよくある(製品の設定メニューなどに怪しい日本語が残っている機種も時々ある)のでこれだけで疑いはしませんが、どうもねぇ……。
疑問点④:海外版を販売?
商品ページの型番をよく見れば分かるものもありますが、どうやら「Xiaomi楽天オフィシャルストア」では海外版のXiaomi製品が売られているようで。各商品の購入者レビューを見ると実態の一端が分かると思います。
楽天市場でしか売られていない商品、通信機能を持たない商品ならともかく、国内正規品があるMi Band 4なんかはおかしいですよね……限りなく黒に近いと思いますがご判断はおまかせします。
参考までに、shimajiro@mobilerさんの記事では「Xiaomi楽天オフィシャルストア」から「電動空気入れ」を実際に購入してレポートされています。
「Xiaomi楽天オフィシャルストア」で買い物したら海外モデルが届いた | shimajiro@mobiler
(余談)Xiaomi Japanは問い合わせ窓口を用意してほしい
この件については小米日本合同会社に聞くのが一番早いだろうと思ったのですが、問い合わせルートが非常に限られていることに驚きました。公式サイトを見ても問い合わせフォームまたはメールアドレスの記載はありませんし、公式Twitter(@XiaomiJapan)だけ。しかもこのアカウント、DMが開放されておらずリプライでしか質問できないので、オープンな問い合わせしかできないんですよね。聞きたい内容によってはかなり困るのでは……。
(3/17追記)その後の動き
3月15日に本記事で「Xiaomi楽天オフィシャルストア」の不審点について取り上げ、非常に多くの方々にお読みいただきました。中には出品者や楽天市場への確認などに動いてくださった方もいたようで、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
3月17日朝に件のストアを確認したところ、「グランドオープンイベント延期についてのお詫び」と題して、以下のような案内が掲載されていました。
2020年3月15日に予定しておりました「Xiaomi オフィシャルストア グランドオープンイベント」に関してですが、商品の入荷に遅延が発生したために延期にさせていただく事を決定いたしました。本イベントを心待ちいただいておりましたお客様には、ご迷惑をお掛けしたことを深くお詫び申し上げます。グランドオープンイベントは通常営業が出来る状態になりましたら開催いたします。
既に多くの商品が入荷・販売されていたことは確認できているのでおかしな話だと思いますが、やはり何かがあったのでしょう。商品ページもごく一部(有線イヤホンや携帯空気入れ)を除いて大半が消滅しています。体制を整えて再開しそうな気配もある文面ですね。
推測ですが、本物だとすれば何らかの手違いで海外版を売ってしまったことの対応にあたっている、偽物だとすれば身を潜めているという状況でしょうか。
何はともあれ、真贋は不明ですがどちらにせよ解決に向かっているように見えます。後は公式からの説明を待つしかないでしょう。
(3/20追記)結論は「本物」
「ケータイ Watch」さんと「すまほん!!」さんに本件に関する取材結果が掲載されていました。詳細は以下の2記事をご覧ください。
「楽天市場のシャオミ公式店」はホンモノだった、楽天と運営元に聞く | ケータイ Watch
「Xiaomi楽天オフィシャルストア」はシャオミ公式店。運営会社の林社長に訊く、疑問と改善 | すまほん!!
結論としては本物で、Xiaomiと楽天の出店契約に、楽天が指定する運営代行業者としてDreamWorksが介在しているという構造。ユーザー視点では“公式”であるという確証を得にくい見せ方となっていたことに加えて、Xiaomi本体とXiaomi日本の情報共有不足、運営面での不手際などが重なり、疑問を抱かれる事態に発展してしまったようです。