4月8日に本格始動、楽天モバイルのMNO参入までの動きを振り返る

2020年3月3日、楽天モバイルのMNOとしての正式サービス開始に向けて、「Rakuten UN-LIMIT」という料金プランが発表されました。300万人までは1年間無料という思い切った施策を打っているので実質的には「無料サポータープログラム」を延長するのと大差ない“ベータ版”状態じゃないかという見方もできますが、今後料金を取って商売を始める時にどんなサービスになるのか、実体が見えてきたという点においては、本格始動に向けて前進したのではないでしょうか。

当初の参入時期と予想されていた2019年秋からは半年ほどが経ち、参入表明から数えると2年強。この間に楽天モバイルはどんな道を辿ってきたのか、主な動きを振り返ってみようと思います。

MNO参入表明~免許取得


国内のMVNOとしては有数のシェアを持っていた楽天が、“第4のキャリア”になる、つまりMNOとして携帯事業に参入する意向を公に示したのは2017年12月(※リンク)。この時点では通信事業を担う子会社はまだなく、楽天名義での参入表明でした。

2018年1月10日には完全子会社の楽天モバイルネットワークが設立され、ここでMNO参入に向けた準備が進められていきます。同年4月6日には総務省の電波監理審議会で1.7GHz帯の割り当てを受け、大前提として必要な周波数帯の獲得というハードルをまずはクリアしました。

ただし、1.7GHz帯オンリーというのは過去にイー・アクセス(イー・モバイル)の前例があるように、エリア構築の面では700~900MHz帯を持つ大手3社と比べて不利。成熟した3社の4Gネットワークの品質と比較されてしまうことを考えるとこれでは厳しいだろうという見方も少なからずある結果でした。

その後、2019年1月に同周波数帯を用いる特定無線局の包括免許を関東、東海、近畿地方で取得。言い換えれば、まずは東名阪の3大都市圏からエリア展開していく計画がこの時点で浮かび上がります。追って、9月までにその他の地域でも包括免許の取得が完了しました。

MVNOも楽天本体から移管、そしてDMM Mobile買収


少し時系列が前後しますが、2019年4月には楽天モバイルネットワークから楽天モバイルに社名が変更され、このタイミングで、親会社である楽天が運営していたMVNOとしての「楽天モバイル」も携帯事業のための新会社に移管されています。さらに、9月1日付けでDMMのMVNO事業「DMM Mobile」を買収。

楽天モバイル+DMM Mobileの(MVNOとしての)ユーザー基盤を生かし、MNOとしての新サービスへの移行を促すことで初期段階の契約数を一気に伸ばそうという戦略です。楽天モバイル(MVNO)ユーザーに対しては「10月以降にMNOのSIMカードを送ります、料金プランはそのまま使えます」という案内が出され(※リンク)、DMM Mobileユーザーには具体的な移行方法の案内こそなかったものの「楽天回線対応の機種を1万円引きで買えるクーポン」が配布され、巻き取りに向けた準備の動きが見られました。

また、同時期に総務省で進行していた携帯料金の値下げや縛り撤廃などに関する有識者会議(モバイル研究会)などいくつかの場で、既存のMNO(主にドコモ)サイドから「MNOでありながら(他のMNOの)MVNOとしてもやっていくのはいかがなものか」という趣旨の直接的な言及も繰り返されており、望むと望まざるとにかかわらず適切な時期にMVNOをやめてMNOとしての新サービスに既存ユーザーをいずれは移行させなければならないことも見えてきました。

「無料サポータープログラム」というスモールスタート


楽天モバイルのサービス開始時期は2019年10月の予定で、周波数獲得のために総務省に提出された資料などでもこのことは確認できます。そして、サービス開始1ヶ月前の9月6日に発表会を開催。料金プランやサービス内容が正式発表されるものかと思いきや、現実は「事実上の延期」でした。もっとも、サービス開始時期は周波数獲得のための公約でもありセンシティブな話題だからか、本人たちは頑なに延期やベータ版ではない、10月1日にサービスを開始したんだと強調していましたが……。

ここで発表されたのは、10月からはまず「無料サポータープログラム」として、5000人規模の無料トライアルを行うということ。2020年3月末まで半年ほどの予定で(後に正式サービスの開始日の兼ね合いで数週間延長)、トライアル期間中はデータ通信も音声通話も国際ローミングも無制限で0円という大胆な試みが話題になりました。

10月1日~7日にかけて対象地域在住の参加者を募集、その後当選者に端末やSIMカードを発送という流れだったので、実際には10月半ばから関係者以外で楽天モバイルのMNO回線を体験できるユーザーが出始めたと考えられます。

開始当初のエリア


楽天モバイルはまず東京・大阪・名古屋の3大都市圏を中心にエリアを構築していき、全国でのエリア整備が進むまでは他のキャリアの手を借りるという選択をしました。

9月末には、無料サポータープログラムの開始に向けてエリアマップを公開。これがまあ酷いもので、自社エリアとパートナーエリア(ローミング)の区別がつきにくいというよりちゃんと説明していない、そして電波の飛び方や基地局の設置状況も考慮されていない塗り絵レベルの代物でした。

2020年1月頃に、横浜・千葉・さいたまなどでのエリア整備状況が反映された新しいマップに更新され、この時には正確性を高めたエリアマップらしいものに改善されています。また、各種発表によると自社エリアの基地局数は2019年12月末までに3000局程度まで増えました。

国内外でのローミング体制


国内外でのローミングの詳細については楽天モバイル自身からはあまり明かされていないものの、相手先が公開している情報からある程度把握できます。

まず、国内でのローミング先はKDDI(au)ですが、楽天モバイルがまず整備を進める東名阪エリアを除くすべてのauサービスエリアでローミングを行うのかというと、それほど単純ではありません。

東名阪エリアでも地下鉄などの早期整備が難しい場所ではローミングする一方、東名阪以外であっても局所的な混雑エリアではローミングを提供しない契約になっているので、実は「楽天にもauにもつながらない」エリアの穴はそれなりに存在し得る仕様です。そして700MHz帯のみの提供なので、混雑も考えると「auエリアなら爆速」というほどおいしい話ではなさそうです。

KDDIとのローミング契約は2026年3月末までなので、楽天モバイルの全国エリア整備はそれまでの数年間が勝負ですね。


一方、国際ローミングはどうなっているのかというと、新規事業者が世界各国の通信キャリアと個別に契約を結んでいくというのもこれまた多大なリソースが必要な話。国内で手いっぱいなのが実情でしょう。そこで仏Orangeの海外ローミング支援を利用し、サービス開始時点で66ヶ国・地域を一気に国際ローミング対象にできる体制を整えたというわけです。

無料サポータープログラム期間中のトラブル

まったくの新規事業、それも携帯キャリアという大がかりなものですし、初期のトラブルはつきもの。それを洗い出すための「無料サポータープログラム」なのでトラブルが起きること自体は非難・問題視すべきではないと考えますが、何があったか、どんな対応をしたのかは今後の姿勢を見極めるためにも知っておいて損はないと思います。

無料サポータープログラムを開始してからの約半年間に起きた主なトラブルとしては、まず受付開始直後に露呈したシステムの問題。「申込が集中してサイトが落ちた」とかは注目度とタダであることを踏まえれば無理もありませんが、10月中旬に無料サポーターの元にSIMカードや端末が届き始めると「開通できない」という報告が多発。

問題はその後で、サポート窓口がパンクしたり対処方法について納得できる説明ができなかったりと、トラブル以上にサポート体制の不備への不満が散見される状況となっていました。

開始直後のシステムトラブルでいえば、これはどちらかというと一部のユーザーが棚ぼた的に得をした話ですが、「2枚目以降のSIMを追加発行できてしまった」なんてハプニングもありましたね。


そして、一番大きなトラブルは12月10日の通信障害。約3時間に渡って音声通話・データ通信が出来なくなったというもので、数万人単位の商用サービスであれば重大事故に該当する内容。5000人の無料サポータープログラム期間中だったので実際にはそうではありませんが、MNOとしての本格始動を控える中での出来事ということで総務省も重く受け止めたのか、行政指導がありました。

この通信障害も、通信障害自体がどうこうというよりは開通トラブルの件と同様にサポート体制の甘さが露呈。サポート部署との連携があまり取れていなかったのか、お粗末な対応をされたユーザーの怒りの声があふれる結果に。サポート周りはMNOでなくてもこれまでMVNO大手としてそれなりにノウハウがありそうなだけに、後手後手に回ってしまうのが不思議なところではあります。公式サイトでの事故情報の開示も遅く、影響範囲なども明示されず薄い内容でした。

この12月の広範囲で起きた通信障害と比べると、2月に大阪・名古屋エリアの一部で発生した通信障害では情報公開がスピーディーになり、影響範囲(約70人)まで当日中に公表されるなど、緊急対応の改善が見られました。

「無料サポータープログラム」第2弾、「Link」もベータ版開始


2020年に入り、1月23日には「無料サポータープログラム」の第2弾として、2万人の追加募集を実施。第1弾の落選者のほか、先着順で受け付けました。ユーザー数を増やした状態でネットワークの状況を確認したかったというのもあると思いますが、この第2弾は単に人数が増えただけには留まらないニュースもありました。

まず、9月から予告されていた「楽天Link」というサービスのベータ版が始まりました。これは+メッセージと同様にRCSという規格をベースにしたサービスで(※現時点では+メッセージとの相互接続はされていない)、SMSの機能を拡張したものであると同時に、国内初となるRCSベースの音声通話機能も実装されています。

これにより、楽天Linkを使えばWi-Fiや他社回線経由でもいつもの電話番号で通話できるという新たな価値が提案されました。少し補足すると、正式サービスのプランで「楽天Linkからの発信なら海外→国内も通話無料」となっているのも、おそらくこの仕組みのおかげですね。

そして、独自端末「Rakuten Mini」も無料サポータープログラム第2弾にあわせて先行販売。この小型スマートフォンはeSIMを採用、それも物理SIMに対応しないeSIM専用機で、早期にeSIMを使ったサービスの展開にも取り組む姿勢を明確にしました。

料金プランを正式発表、4月8日開始


そして3月3日、正式サービス開始時の料金プランとなる「Rakuten UN-LIMIT」が発表されました。あわせて、サービス開始日が4月8日となることも決定。

料金プランを簡単に説明しておくと、楽天エリアではデータ通信無制限、ローミングエリアでは月2GBまで。音声通話は30秒20円ですが「楽天Link」を使えばかけ放題。月2,980円ですが、最初の1年間は無料です(そういう意味では、“無料サポータープログラム第3弾”なんて言われてしまうかもしれませんが……)。

無制限プランを手頃に提供するという大筋の流れでは計画通りの内容で、無料サポータープログラム提供時の内容から大きく外れているわけでもありませんが、ローミング時のデータ通信量を制限、それもかなり厳しめの容量にしているのはやはりコスト的な問題があるのだろうと思われます。自社エリアの早期拡大に期待するしかないですね。

また、この料金プランで行く以上は、意識的に見に行かなくても楽天・KDDIのどちらの基地局に繋がっているかを認識できる仕組みを整えないと納得してもらえないでしょう。「アプリを開けば分かる」では対応不足と思われ、自社エリア構築までの繋ぎとはいえフォローが必要だと感じます。

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