• HOME
  • レビュー
  • 「AQUOS zero2」レビュー、異次元の“軽さ”が最大の魅力

「AQUOS zero2」レビュー、異次元の“軽さ”が最大の魅力

1月末に発売されたシャープの軽量ハイエンドスマホ「AQUOS zero2」を購入しました。今回はドコモ版のSH-01M、カラーはアストロブラックを選択。1週間ほど使ってみたのでレビューします。

「AQUOS zero2」ってどんな機種?

シャープの国内向けAndroidスマートフォンは、普及モデルの「sense」とフラッグシップの「R」の二本柱で展開されてきましたが、2018年冬、ターゲットの異なるもうひとつのフラッグシップとして「zero」シリーズが追加されました。


(初代AQUOS zero)

高性能なカメラや便利な機能を求めてフラッグシップモデルを選ぶ人ではなく、ゲームや動画などのコンテンツを楽しむヘビーユーザーのニーズに応えるのがzeroシリーズの基本コンセプト。

単に基本性能を底上げするだけではなく排熱などにも配慮しているほか、「長時間使う人こそ、本当は軽くて持ちやすい機種が必要」という年々重くなる一般的なハイエンドスマートフォンに対するアンチテーゼとも言える考え方で作られています。


そして、初代「AQUOS zero」の発売から約1年、そのコンセプトを受け継ぐ2代目の「AQUOS zero2」が発売されました。最新のハイエンドモデルとしてスペックを強化したのはもちろん、最大の特徴である“軽さ”にも磨きをかけました。自社製有機ELを引き続き採用し、残像感を軽減する高速ディスプレイやタッチ検出の高速化などゲーマー向けの仕様も盛り込まれています。

初代AQUOS zeroの取扱キャリアはソフトバンクのみ、後にSIMフリー版が発売されました。初代の反響が大きかったのか、AQUOS zero2はドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアからの登場となりました。

外観:軽さを追い求めながらも個性的なデザイン


まずは外観をチェック。前面の大半はディスプレイで、上部にはインカメラ部分だけの小さな切り欠き(水滴型ノッチ)がある今風のデザインです。

初代は特に変わったセンサー類が付いているわけでもないのにノッチが大きくやや野暮ったいデザインだったので、ここは良くなったと思います。


下部のベゼルは見た目のバランス的に違和感がない程度に、上部より少しだけ広めに取られています。さすが、かつて3辺狭額縁の「EDGEST」を大々的に打ち出したシャープだなと感心。

見た目だけを考えると上下均等にしたり、下側もギリギリまで削ったりしてしまうメーカーも多いのですが、AndroidのUIや端末の重量バランスを考えると大変使いにくいものになってしまいます(Xperia 8のような“上残し”なんてもう……)。実用性と見た目のバランスを取った落とし所としては良い塩梅だと思います。


左側面にはキーやカードスロットなどはありません。

電源キーと音量キーは右側に配置。

上部にはSIMカードトレイ。余談ですが、SIMカード1枚だけ(microSDもなし)のためのトレイにしては妙に長いです。デュアルSIM版を作る予定でもあるのかも……?

下部にはスピーカーとUSB Type-C端子、そしてなぜか通知LED。

正面からは分かりにくいですが、真上や真下から見るとディスプレイ全体がゆるやかに湾曲していることが分かります。Galaxyのエッジスクリーンのように左右の端だけ丸めるのはすっかり一般的になりましたが、zero2や初代zeroのように全体がカーブしていて平面部分がない仕様は珍しいです。メリットもデメリットもあまり感じないものの、zeroシリーズらしさを演出するデザインの一部にはなっているかも。


初代zeroではバックパネルの素材にアラミド繊維を採用したことも特徴のひとつでした。zero2の背面は樹脂製に変更されましたが、グラデーションや金属風のヘアライン模様の入った塗装(フィルム?)が凝っていて、これまた個性的。ちなみに、フレームは初代zeroと同様にマグネシウム合金製です。

発表当初で143g、最終的な141gと細部まで切り詰めて軽さを追求し続けた機種でありながら、見た目もつまらないものではなく魅力のあるものに仕上げられています。

スペック・動作:最新のハイエンド機らしいスペック

AQUOS zero2 SH-01Mのスペック表
SoCSnapdragon 855
RAM8GB
ROM256GB
外部ストレージ×
画面サイズ6.4インチ
画面解像度2340×1080(FHD+)
バッテリー容量3130mAh
充電端子USB Type-C
OSAndroid 10
アウトカメラ約1220万画素+約2010万画素
インカメラ約800万画素
サイズ約158×74×8.8mm
重量141g

Snapdragon 855と8GBメモリを搭載し、基本動作にストレスはありません。スクロールのチューニングにややクセがあり、AQUOS以外から買い替えると最初は気になるかも。しかし、毎秒240回のタッチ検出を行う高速タッチパネルなどの恩恵もあり、操作への追従性は現行のハイエンドスマートフォンの中でも優秀な部類です。

microSDには非対応ですが、内部ストレージは余裕の256GB。UFS 3.0なので読み書きも高速です。「パラレル充電」という充電しながら使う際の発熱源となるICを2ヶ所に分散させるアイデアなど、放熱にも気を配った設計なのはGOOD。

スペックの参考に、ベンチマークアプリの計測結果を以下に載せておきます。


(Antutu Benchmarkのスコア)

(Geekbench 5のスコア)

バッテリー容量は3130mAhとスペックの割には少なめですが、1週間使ってみて、電池もちは意外と気になりませんでした。ただ、「容量は少ないけど燃費がいいから気にならない」タイプの機種はバッテリーの劣化が始まると電池もちの不満が大きくなりやすいので、過信は禁物。

防水・防塵仕様でおサイフケータイにも対応し、ワンセグ・フルセグは非対応。「AQUOSなのにテレビ観れないの!?」という声があまり聞かれなくなったのは、すっかりスマートフォンのブランドというイメージが上回ったのかなあと思ったり思わなかったり。


機能面での特徴としては、AQUOSシリーズ初の画面内指紋認証に対応したということが挙げられます。Rシリーズやsenseシリーズは前面下部の画面外、初代zeroは背面に指紋センサーを搭載していました。初物ということであまり期待はしていませんでしたが、速度・精度ともにイマイチ。次回以降に期待です。

UI:素のAndroidに近いUI、ゲーミングメニューを搭載

近年のAQUOSスマートフォンではおなじみ、素のAndroidに近いシンプルなUIとなっています。今冬の新機種でもAQUOS sense3シリーズまでは初期OSがAndroid 9でしたが、最後発のzero2はAndroid 10。


Android 10のジェスチャーナビゲーションももちろん使える……と言いたいところですが、ホームアプリを「AQUOS Home」以外に設定するとジェスチャーナビゲーションを選択できないという困った状態。

実はこれ、シャープが悪いわけではありません。特定のバージョンまでの初期のAndroid 10自体が抱えていた不具合なので、今後のアップデートでの解決を期待します。

AQUOS Home縛りになると何が困るかといえば、一見ごく普通の今時のホームアプリなのですが、ドロワーの並び替えが手軽にできないんですよね……。


UIは基本的にRシリーズやsenseシリーズと同じ。“液晶のシャープ”のスマホとしては唯一、有機ELを採用するシリーズということもあってか、有機ELの電池消費を抑えられる黒基調の「ダークテーマ」がセットアップの段階からあらかじめ設定されていました。

zeroシリーズの独自機能としては「ゲーミングメニュー」があります。ゲーム用のハイレスポンスモード、通知ブロック、画面録画といった機能にすぐアクセスでき、攻略情報の検索もできます。

ディスプレイ:AQUOSらしい発色、高速表示の仕様変更はやや残念

zeroシリーズといえば軽量ハイエンドスマホですが、ディスプレイも軽さと並ぶ大きな特徴。

シャープのスマートフォンは省電力性能に優れた「IGZO」やそれ以前に多用されていた「S-CG Silicon」など液晶ディスプレイのイメージが強い……というよりシャープ自体が液晶で一時代を築いた会社。その中で、zeroシリーズは有機EL、それも自社開発の物を採用する異色の製品です。


zero2のディスプレイは6.4インチに拡大され、解像度は2340×1080(FHD+)。「4倍速ディスプレイ」というのが売りのひとつです。

4倍速とは何かというと、一般的なスマートフォンのディスプレイが60Hz駆動であるのに対し、zero2のディスプレイは120Hz駆動、つまり毎秒120コマの表示が可能です。これだけだと2倍速ですが、コマ間に黒画面を挿入することで動きのある映像でもブレや残像感を低減できるというのが最大の変更点。まあ、それを4倍速と言うのはちょっとどうかと思いますが……。2倍速+αという感じですね。

ディスプレイの発色については、初代AQUOS zeroと似た印象を受けました。どういうことかというと、IGZO液晶モデルとかなり近い発色です。画質モードは色々選べますが、好みに応じたきめ細かな設定はしにくく、そろそろ他社のような色温度ベースの無段階調整に対応して欲しいところ。

ここまでにも何度か触れたように、zero2はマーケティング的にはゲーミングスマートフォンに近いアプローチでの訴求もされています。このため、ゲーマー向けの機能がいくつか追加されているのですが、ディスプレイにもゲームに特化したモードが用意されています。

先述の「ゲーミングメニュー」とも関連していて、ゲームアプリを起動中と判定されたときだけ(手動での対象アプリ選択も可能)、ゲーム専用の画質モードに切り替えるという挙動になっています。これはゲームクリエイターが意図した通りの色を忠実に出すための画質モードで、この時だけは“AQUOSの色”よりもゲーム本来の色が優先されるというわけです。


一方、中途半端にゲーマー向けのスマートフォンになってしまったばかりに、普段使いしたいユーザーとしてはやや割を食わされた印象も受けるのが高速表示の設定。

AQUOSシリーズでは高速表示は何年も前の機種からおなじみの機能で、従来は「なめらかハイスピード表示」などの名称でアプリごとに有効化する設定ができましたが、zero2の高速表示設定はゲーミングメニューの一部になってしまったので、ゲーム以外を高速表示させたい(高速表示以外の機能は一緒についてきて欲しくない)場面では不親切な仕様です。

過去の高速表示対応機を使ってきた経験からすると、たとえばWebサイトの記事を読んだりSNSのタイムラインを見たりするとき、120Hzだとスクロール中でもはっきりと文字を読み取りやすく、一般的な60Hzの機種とは明確な差を感じられました。

実質的にゲームでしか高速表示をさせない仕様になってしまったのはがっかり。一応、ブラウザやSNSアプリなどをゲーミングメニューの設定に入れてしまえば高速表示させられますが、それはそれで他のゲーミング機能まで呼び出されてしまうので考えものです。

黒挿入の疑似4倍速ではなく従来の倍速表示でも良いので、ぜひ通常アプリの高速表示設定を元に戻していただきたいと強く願っています。

一部で過剰に騒がれている焼き付きについては、1週間使ってみた限り、通常利用で気になるような現象は起きていません。「何時間も同じUIが表示され続けるゲームをプレイするなら別なのかな?」「AQUOSシリーズ内での買い替えなら初めて有機ELを使う人も多いだろうから、使い方も感じ方も違うのかな?」「すぐ消える一時的な残像まで焼き付きだと言っているのでは?」「そもそも使ってもいないのにギャーギャー煽り立てるあの辺のクソサイトは本当に何なん?」など色々と思うところはありますが、ひとまずそんな気になるような物でもないですよ、とだけ。

カメラ:シーンごとの当たり外れが大きい、超広角はダイナミックな写りを楽しめる


アウトカメラは約1220万画素(広角)+約2010万画素(超広角)で、インカメラは約800万画素。

Rシリーズのような動画専用カメラではなく普通のデュアルカメラにしたり、インカメラの画質を落としたりしているのは、「zeroシリーズの購買層は動画も撮らないし自撮りもしない」という判断なのでしょうかね……? 冷静な分析で良いなと思います。

実際、動画用カメラではなく画角切り替えができる静止画兼用のサブカメラ、それも望遠ではなく超広角が付くと聞いて喜びました。今時のデジタルズームは良くなっていますし、2つだけカメラを付けるなら「広角+望遠」より「広角+超広角」のほうが撮れる写真の幅が広がると思うのです。

さて、カメラ構成は褒めましたが写りは……。他のAQUOSシリーズも多々買っているのであまり期待していなかったものの、やはりチューニングが微妙ですね。うまくハマって綺麗に撮れる場面もないわけではありませんが、パッとしない写りになってしまうシーンが多いです。以下、作例はクリックして大きいサイズで見られます。

2020年の9万円前後の機種として相応のレベルには達しておらず、下手したら3万円台でももっと綺麗な機種はあるよね、というのが率直な感想です。

ただ、ひとつだけフォローさせてください。超広角での歪みがひどいとしきりに言う人がいますが、レンズ設計が悪かったり補正の出来が悪かったりで線がぐにゃぐにゃに歪む機種ならともかく、一定の画角を超えた超広角レンズで樽型の歪みが出るのは当たり前のことで、品質の問題ではまったくありません。搭載スペースもレンズの全長も厳しく制約されるスマートフォンのカメラではなおさらで、縦横ビシッと直線が出る機種は基本的にゴリゴリの電子補正がかかっているだけのことです。


扱いやすさを重視するならそういった少々やりすぎなぐらいの歪み補正が是とされることもあると思いますが、zero2のカメラはある意味超広角らしいダイナミックな写真を撮るにはうってつけで、上手く使えば楽しいものだと思いますよ。

総評:人を選ぶが、刺さる人には刺さる機種


この機種は、例えるなら「不便だけど軽くて速いピュアスポーツカー」のようなものだと思います。万人受けする完璧な機種かと言われればそんなことはまったくなく、あれがダメ、これがダメだと文句を言うユーザーの気持ちも分からなくはありません。結局は、最大の武器である「軽さ」と、それでいて200g近い機種も珍しくないような他のハイエンドモデルと比肩するスペックが手に入るという事実に、どれだけ自身の使い方やライフスタイルの中で価値を見出だせるかがこの機種を買うべき人かどうかの分岐点なのだろうと思います。

付け加えるなら、ゲーミングスマホのつもりで買うのもおそらく辞めたほうが良いです。純粋なゲーミングスマホが目指すところとは少し違うので、機能面で不足を感じるかもしれません。正直、ゲームだeスポーツだとアピールしているのは、こういう尖った機種を作りたいがための建前なんじゃないかなと思ったり……。

ネガティブ寄りなまとめになってしまいましたが、決して悪い製品ではなく、最近のスマートフォンとしては珍しいぐらい、「合う・合わない」がはっきり分かれる機種だと思います。私は初代zeroも気に入って使っていましたが、こういうニッチな製品は続かないだろう、きっと一代限りになってしまうだろうと思っていたので、正当進化した後継機を手に取れたことは非常に喜ばしく思っています。

関連記事