
「Pixel 4 XL」レビュー。高速な顔認証など見どころはあるが及第点
Googleが2019年10月に発売した4世代目のPixelスマートフォン、大画面モデルの「Pixel 4 XL」をレビューします。先に断っておくとあまり満足していないので、今回はやや辛口かも。
「Pixel 4 XL」ってどんな機種?
Pixel 4シリーズは、Googleの自社ブランドAndroidスマートフォン「Pixel」シリーズの4代目。5.7インチの「Pixel 4」と6.3インチの「Pixel 4 XL」の2サイズ展開で、画面サイズやバッテリー容量以外の仕様は共通しています。
1年前に発売された「Pixel 3」「Pixel 3 XL」からの主な変更点は、ドットプロジェクターを使った顔認証、レーダーによる画面に触れない新操作、シリーズ初のデュアルカメラ(背面)などです。
日本では、Google ストアでSIMフリー版が直販されているほか、ソフトバンクからも発売。なお、Pixel 3やPixel 3aを取り扱っていたNTTドコモからは今回は発売されていません。
外観:心地良い質感、美しくはないデザイン
まずは外観からチェックしていきましょう。前面を見ると、前世代のPixel 3シリーズよりも狭額縁化が進んだことがわかります。ただし、そのアプローチは独特で、上ベゼルを残して左右下の3辺を削ったデザイン。
なぜこうなっているのかというと、上側のベゼル部分にはインカメラのほかに、高度な顔認証機能のためのセンサーや、画面に触れずに操作できるという「Motion Sense」のための部品が詰め込まれているからです。ちなみに、インカメラはデュアルカメラからシングルカメラに変更されています。
背面は初代から受け継がれてきた「上下ツートン」ではなく、サラサラした手触りの良い仕上げのガラスパネルで覆われています。ロゴはもちろん「G」のみでシンプル。ちなみに、3色のカラーバリエーションのうち「Just Black」だけは光沢のある普通のガラスです。
右側面には電源キーと音量キー、左側面にはSIMカードトレイを配置。電源キーにワンポイントの差し色が入っているのはPixelらしい遊び心ですね。フレームの色はボディカラーを問わずマットブラックで統一されているのですが、うーん……あの頃は特別な存在だった「白のiPhone 4」に電波強度問題で配布された無粋な黒バンパーを着けたときのような、なんとも言えない気持ちになります。
上部には2ndマイク、下部にはマイク・スピーカーとUSB Type-C端子があります。Pixel 4 XLはデュアルスピーカーなのですが先代とは配置が少し変わっていて、Pixel 3 XLのスピーカーは2つとも前面に配置されていたところ、Pixel 4 XLの下部スピーカーはご覧の通り底面にあります。音質の低下は感じませんでしたが、ゲームプレイ時など横向きにして両手で持って使いたいときには若干不便ですね。
私はPixel 4とPixel 4 XLのデザインはあまり気に入っていないのですが、これが10万円超のハイエンドモデルではなく、5万円ぐらいの機種で「ちょっと気取ったデザインが売りのミドルレンジスマホ」のようなポジションならアリかなと思います。
ガラス部分の手触りはとても良いですし、あえて金属感を隠したフレームの仕上げも面白い。カメラ周りも少しiPhone 11シリーズに一見似ているように見えて、ブラックアウトさせたことで引き締まって良い感じです。ただ、これが価格相応かというとちょっと違うかな、と。まあ、Pixelって前からそういうところがあって、これがチャームポイントではあるのですが。
見た目の好みを抜きにしても、Pixel 4のガワには満足できない部分がまだあります。まず、「上だけ残した狭額縁」というのは、見た目がアンバランスで醜いというだけの理由で否定しているわけではなく、実際の操作を考えるとほぼ最悪と言っても良い選択肢です。
画面がボディの下側に偏ることでボディの下端まで指を伸ばすしんどい操作が増え、ユーザーが端末を持つ位置が下寄りになるのと逆に端末の重心は画面の中心よりも上に行く……といった具合に、とにかくバランスが悪くなります。画面占有率を追い求めてユーザー不在の選択をして良いのか、Pixelシリーズはどちらかといえば人に寄り添うデザインを志していたのではないか、とPixel 4シリーズを見た時はがっかりしました。そして、実際に使ってみてもこの考えは変わっていません。
さらに悪いことに、Pixel 4シリーズは先代よりも重くなっていて、Pixel 4は162gとまだ平均的な範囲ですが、Pixel 4 XLは193gもあります。操作時のバランスを十分に考慮していない設計、滑りやすい背面、重いボディ。この3つが重なってしまったが故にお世辞にも扱いやすいとは言えないスマートフォンになってしまっています。
スペック・動作:メモリは増量、発熱と電池持ちに不安要素
Pixel 4 XLのスペック表 | |
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SoC | Snapdragon 855 |
RAM | 6GB |
ROM | 64GB/128GB |
外部ストレージ | × |
画面サイズ | 6.3インチ |
画面解像度 | WQHD+ |
バッテリー容量 | 3700mAh |
充電端子 | USB Type-C |
OS | Android 10 |
アウトカメラ | 約1220万画素 F1.7(77°)+約1600万画素 F2.4(52°) |
インカメラ | 約800万画素 F2.0(90°) |
サイズ | 約160.1×75.1×8.2mm |
重量 | 約193g |
SoCはハイエンド向けの「Snapdragon 855」を搭載。メモリはPixel 3まで長らく4GBでしたが、ようやく6GBに。昨今のハイエンドモデルとしては多いほうではありませんが十分認められるラインではあるかなと思います。体感動作は十分快適でした。従来通り外部ストレージには対応しないので、容量の大きいモデルを買うか「Googleのスマホ」らしくクラウドをフル活用するかの二択。参考までにベンチマークアプリでの計測結果を載せておきます。
やや気になったこととしては、熱々にはならないまでも、軽い負荷でも表面温度が上がりやすいですね。見方を変えればちゃんと放熱できているということなので機器の動作にとっては必ずしも悪いことではないと思いますが、やはり手に持って使う機器なので夏場はどうかな、とやや心配。また、これまでの傾向からあまりバッテリー容量に余裕を持たせないシリーズなので予想はしていましたが、あまり電池持ちは良くありません。
UI・機能:目玉機能の日本解禁に期待
UIはいつものPixelシリーズで、ごくシンプルなのであまり語るところはありません。誤解されやすいですが、あくまでNexusシリーズのような純粋なリファレンスモデルではなく、「Google自身がコンシューマー向け製品として作るスマートフォン」なので、完全な素のAndroidというわけではなく多少のアレンジは加えられています。今のところ旧機種には反映されていないUIの新要素としては、アイコンやフォントなどのスタイルを変更できる機能が加わりました。
独自機能を見ていくと、まずPixel 3やPixel 3aでは日本向けモデルには搭載されていなかった「eSIM」がついに搭載されました。しかも、これまでは「eSIM搭載モデル」と「FeliCa搭載モデル」に分かれていたのに、Pixel 4の日本版はeSIMもFeliCaも載っています。これは良い。

Pixel 4には指紋認証がありません。今は画面内指紋認証というデザインの邪魔にならない便利なものがあるのに……と思わなくもないですが、元HTCの部隊が中心となって開発していると考えるとそのノウハウはないよなあ……と仕方ない気もしてきます。
その分、顔認証はインカメラを使ったものではなくiPhone X以降と同じようなドットプロジェクターを使ったものに進化しています。明るい場所での認証速度は申し分なく、持ち上げて画面点灯→同時に顔認証→自動でロック画面をスキップという流れなので、一々スワイプしないといけない理解に苦しむUIを採用し続けているFace IDと違ってストレスになりません。ただ、暗い場所での精度はFace IDに一歩劣る印象。しかし、Pixel 4は「横向きでも顔認証できる」という長所もあるので、一長一短でしょうか。
目玉機能のジェスチャー操作「Motion Sense」は、発売時点では日本では利用できません。法規制の兼ね合いなので2020年春頃に対応予定ということで、今後に期待。
カメラ:なぜ2つめのカメラに「望遠」を選んだのだろう
Pixel 4とPixel 4 XLのカメラは共通で、背面のメインカメラはシリーズ初のデュアルカメラに。少し意外だったのですが、2つ目のカメラは「超広角」ではなく「望遠」が選ばれています。
昨年のPixel 3を振り返ると、他社のフラッグシップモデルが軒並みデュアルカメラやトリプルカメラになるなかシングルカメラにこだわり、話題となった夜景モードをはじめとした画質、そして望遠カメラを持つ機種にも見劣りしない超解像ズームで渡り合っていました。これを考えると望遠カメラが加わるメリットは小さく、画像処理技術では解決できない超広角カメラを加えたほうが威力を発揮できる場面は多かったのではないでしょうか。
あるいは、仮に超広角カメラは不要と判断した理由があったとして、「広角+望遠」の構成を選ぶのなら広角側のメインカメラの画角をもう少し広くして欲しかったなとも思います。後ろに下がれないところでは画角に収まりきらない場面も少なくありません。
画角への不満話が長くなってしまいましたが、画質はさすがのPixel。ただ、ハードよりソフトの力で実現されているもので、そのソフト面での進化は旧機種でも恩恵に預かれるとなると、カメラを目当てにPixel 4やPixel 4 XLを買うだけの明確なアドバンテージがあるかにはあまり自信がありません。Pixel 3やPixel 3aでもあまり変わらないように思います。
総評:悪くはないが最良の選択ではない
「Pixel 4 XL」という機種だけを見れば、絶対に買うな!というような致命的な欠陥があるわけではありませんし、最新のAndroid 10やPixelならではのカメラを使えて、キャリアを問わず使える対応バンド、FeliCaや防水にも対応、まだ対応端末が少ないeSIMだって使えますし、顔認証は速く、来春には面白そうな新機能も加わる……決して悪い機種ではないと思います。
ただ、前機種から比べると適切なサイズ感やなんだかんだで使い勝手の良い指紋認証など失われたものもありますし、トータルでPixel 3 XLよりも良くなったか、買い換える価値はあるかと問われれば首を縦には振れません。色々な意味で「これで11万円なら他社のフラッグシップモデルを買ったほうが、より良いユーザー体験と感動が得られる」と思ってしまったのもまた本音です。