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どっちのキーボード付きスマホを買う?「F(x)tec Pro1」と「Cosmo Communicator」で迷った末の結論

十数年来のモバイル好きとしては、かつて憧れ、そして使っていた「小型のキーボード付き端末」には今もなぜか惹かれてしまいます。元も子もないことを言ってしまえば、私だって小さなQWERTYキーボードをポチポチ押すよりフリック入力の方がよっぽど速いことは重々承知しています。それでもあのスタイルにはロマンを感じるのです。

PC界隈を見ると、近年はどうやらGPDなどの活躍もあって7~9インチのUMPCが再び盛り上がっているようです。喜び勇んでいくつか買ってみましたが、やっぱりつらいんですよね。小さな画面とクセの強い操作でデスクトップOSを扱うのって。思ったほど生産性が上がりませんでした。

「本当にもう一度使ってみたいのは、Android黎明期にあったような横スライドやクラムシェルのキーボード付き端末だなあ……今時のスペックと画面サイズでリメイクしたら、あの頃の“理想と現実のギャップ”が解消された完成形を見られるんじゃないか」――そんなことを考えていたら、今秋はまさに思い描いていたようなデバイスが2つも、ほぼ時を同じくして世に出されようとしています。

ひとつは、FX Technology社の「F(x)tec Pro1」というスライド型端末。もうひとつはPlanet Computers社の「Cosmo Communicator」というクラムシェル型端末です。ちなみに、この2社はどちらもイギリスが本拠地。QWERTYキーボード付き端末の需要が根強い国なんでしょうかね?

両方買って応援したいところではありますが、実際、2台もキーボード付きスマホを使い分けるほど利用シーンがあるかというと微妙なので、どちらを買おうか考えてみることに。普段は「買ってから考える」タイプなのであまりこういう机上の空論になりかねない記事は書かないようにしているのですが、たまには、ね。

両機種の概要

F(x)tec Pro1

「F(x)tec Pro1」を開発しているFX Technologyの源流は、かつてクラウドファンディングからスタートしてMoto Zシリーズ用の外付けキーボードを作っていたLivermoriumという集団です。そのKeyboard Modはどうなったのかというと、結局、ひとことで言えば「Motorolaが持ち上げておいてハシゴを外した」ことで断念されてしまったのですが……残念な出来事でしたね。

そんなこともありつつ、彼らはくじけず端末ごと自社開発することに。そして生まれたのがこの「F(x)tec Pro1」です。閉じた状態では5.99インチ(18:9)の曲面有機ELディスプレイを備えた今時のスマホ。横方向にスライドさせるとQWERTYキーボードが現れます。SoCは「Snapdragon 835」で、少し前の世代とはいえ上等な物を使っています。メモリ(RAM)は6GB、OSはAndroid 9。

Cosmo Communicator

「Cosmo Communicator」を開発しているPlanet Computersは、既に「Gemini PDA」という同様のクラムシェル型端末を製品化した実績があります。IS01を愛用していた者としては、これはスマートフォンというよりスマートブック(死語)と呼びたくなりますね。2世代目にあたるCosmo Communicatorの特徴は、天板に小型のサブディスプレイを搭載したことで、開かなくても電話を取ったり通知を確認したりといった簡単な操作ならこなせるようになりました。

先代と同様にクラウドファンディングで出資を募り、目標額は既に達成。スケジュール的には遅れ気味ですが開発中という状況です。SoCはMediaTekの「Helio P70」を搭載予定で、RAMは6GB。標準OSはAndroid 9ですが、Debianなどへの対応も予定しています。

良さそうな点

F(x)tec Pro1

・スライド型なので「普通のスマホ」としても使える

QWERTYキーボード付きの端末って、基本的には両手が空いていないと使えないんですよね。その点、Pro1に限ったことではありませんが、スライド型なら閉じた状態では普通のスマートフォンとして使えるのは便利です。厚さや重さ次第ではあるのですが、現時点では本体重量が公表されていないのでノーコメント。

・安心と信頼のSnapdragon

2世代遅れ(855 Plusもカウントすると2.5世代遅れ?)とはいえ、デファクトスタンダードであるSnapdragon、それも当時のハイエンドを使ってくれているのは嬉しいところです。新興メーカーにしては頑張っているのではないでしょうか。

・親指タイプしやすそうなキーボード

肝心のキーボード部分は、サイズ的にも作り的にもどちらかといえば両手で端末を持った状態で使う「親指タイプ」に適していそうなシートキー。個人的にはオプチャ(Optimus Chat L-04C)ぐらいクリック感があるのが好きですが……どんな感触でしょうね。今時の6インチサイズということもあって、横方向にはだいぶ余裕のありそうなキーボードです。

Cosmo Communicator

・キーボードの面積を広く取れるクラムシェル型

キーピッチやキー配列ではやはり、画面とほぼ同じ面積をキーボード部分に充てられるクラムシェル型に軍配が上がります。先代のGemini PDAに似た形状で、さらに改良されたキータッチには期待できそう。

・クラムシェル型の弱点、「開かないと何もできない」を解決

キーボードという最大の武器だけを見れば優位性があるクラムシェル型ですが、その弱点は「いちいち開かないと何もできない」こと。スマートフォンとして見れば、電車内での通知確認など片手で済ませたい場面も多いはず。Cosmo Communicatorはサブディスプレイでその弱点を補っています。

・日本市場を重視している

クラウドファンディング発の製品とはいえ、Cosmo Communicatorは既にリンクスインターナショナルが国内代理店となっていて、8月には日本で正式発表が行われました。なんでもGemini PDAは日本での販売台数が多かったそうで、後継機のCosmo Communicatorでは日本のキャリアで使いやすいように対応バンドを増やし、先代に続いて日本語キーボードを用意するなど手厚い対応をしてくれています。

微妙そうな点

F(x)tec Pro1

・画面の角度が1段階固定

実はこれ、イメージカットだけでは気付きにくいのですが、Z型ヒンジで角度は1段階固定なのです。おそらくCosmo Communicatorも(Gemini PDAの仕様から考えると)角度固定のはずなので同じといえば同じなのですが、Pro1の場合はあくまで手に持って使うキーサイズであることを考慮すると、フラットではなく少し画面が起きた角度で固定されるのは中途半端な印象を受けます。

・対応バンドが少ない

LTEの対応バンドが少なく、日本の3キャリアのうち満足に使えそうなのはSoftBankだけ。少ないバンドでエリアや混雑に悩まされながらであれば一応docomo/au回線も使えそうではありますが、ちょっと人を選ぶかも。

Cosmo Communicator

・初代のような「後期生産ほど改良されていく」展開がこわい

未知の会社が作る初物ではなく2代目、という多少の安心感はありますが、Gemini PDAのときのことを振り返ると、初物を買うと損をする可能性が少なからずあります。後期ロットでキーボードの改良などが行われたのは良いことだと思いますが、「途中からSoCが変わる(良くなる)」なんていうのは嫌ですよね……。仮にもクラウドファンディングで作っているのに、通常購入者と比べて出資者が損をする“早い者負け”のような仕様変更をした前科のある会社だということは頭の片隅に置いておいたほうが良さそうです。

・MediaTekのSoCには期待できない

雑食なので、キーボード付き端末に限らず、スマートフォンは主要メーカーのフラッグシップモデルから無名中華メーカーの得体の知れない機種まで色々買っています。その上で、MediaTekのSoCというのはカタログスペックだけを見れば良さそうに見えてもどうも実際のパフォーマンスは伴わないというか……。CPU性能は置いておいても、グラフィックやモデムなども考慮するとやはり少し気がかりです。

結論

正直どちらも万人におすすめできるようなものではなく、買う前から透けてみえる弱点はそれなりにあります。欠点のない物、信頼できる物を選ぼうとするとおそらくどちらも無理なので(両方とも絶賛開発遅延中の製品ですし)、結局どんな使い方をしたいか、どちらにロマンを感じるかで選ぶしかないのかもしれません。

私は複数台持ちで普通のスマートフォンと併用するつもりなので、閉じれば普通のスマートフォンとして使えるスライド型より、キーボードが欲しい場面でより大きな効果を発揮してくれる(はずの)クラムシェル型のほうが合っているかな、という理由で「Cosmo Communicator」を選びました。遅ればせながら出資してきたので、届いたらまたご紹介します。

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