
貿易戦争に巻き込まれていなければ……不遇の名機「HUAWEI P30」レビュー
米中の貿易戦争に巻き込まれ、5月末からの一連の動きによって、一般ユーザーに影響はない(と思いたい)けれどそれなりのお金を出して買うにはやはり躊躇する、人に勧めるのはなおさら……という残念な状況に置かれてしまっているファーウェイ。迷いに迷った末、果たして本当に売り出せるのかも分からないキャリア版のP30 Proを待つのはやめて、国内SIMフリー版の「HUAWEI P30」を買ってみました。今買おうとしている人の背中を押すのは難しいですが、記録も兼ねてレビューしておきたいと思います。
外観:美しいグラデーションだけでなく、細部までレベルの高い仕上がり
上位機種のP30 Proは左右が丸みを帯びたラウンドディスプレイを採用していますが、P30はフラット。上部にはインカメラのための小さな切り欠き、いわゆる水滴型ノッチがあります。昨年のP20では画面下に指紋センサーがありましたが、P30では画面内に移動。今時の高級機種らしいベゼルレスデザインとなっています。
日本市場に投入されたカラーはブリージングクリスタルとオーロラの2色で、どちらもバックパネルにグラデーションがかかっています。私が購入したのは「ブリージングクリスタル」で、淡い独特の色合いが夏らしくて素敵です。……と言っても、日本では夏モデルに区分されているだけで、海外では春に出ていますから考えすぎかもしれませんが。


右側面には音量キーと電源キー、左側面にはSIMカードスロットがあります。フレームは光沢のある金属製で、背面にあわせた青っぽい色合い。OPPOの「R17 Pro」のようにフレームまでグラデーションにするといった凝った塗装ではないのですが、個人的にはしつこすぎず良いなと思います。


上部には特に何もなく、下部にイヤホンジャック、USB Type-C端子、スピーカーを配置。Proにはイヤホンジャックがないので、無印P30を選ぶちょっとしたメリットです。
フレームは上下の2面だけ平らに潰したような複雑な形状になっているのですが、それでいて破綻なく美しい光沢をまとっています。金属フレームと背面の3Dガラスの合わせもバッチリで隙間なく組み上げられていますし、側面の各キーも大きなグラつきはなくしっかりとしたクリック感があります。さまざまな素材で構成されているはずなのに、角をトントンと叩いてみれば1枚の金属板のように響く一体感があり、当然こんな筐体ですからホームボタンを押したときの振動も心地良く……マニアックな話になってしまいましたが、筐体の作りはかなりのものです。
スペック・動作:P20の時よりもSnapdragon勢に劣らない印象
HUAWEI P30(ELE-L29)のスペック表 | |
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SoC | Kirin 980 |
RAM | 6GB |
ROM | 128GB |
外部ストレージ | NMカード |
画面サイズ | 6.1インチ(有機EL) |
画面解像度 | 2340×1080(FHD+) |
バッテリー容量 | 3650mAh |
充電端子 | USB Type-C |
OS | Android 9 |
アウトカメラ | 約1600万画素(超広角)+約4000万画素(広角)+約800万画素(望遠) |
インカメラ | 約3200万画素 |
サイズ | 約149.1×71.36×7.57mm |
重量 | 約165g |
昨年の「HUAWEI P20 Pro」も使っていたのですが、Snapdragon 845を搭載していた同時期の他社ハイエンドモデルと比べると、スクロールなどの一般的な操作を含めてややカクつく、頼りない印象でした。その点、今回は今時のハイエンドモデルらしく不満なく使えています。スペックの参考に、ベンチマークアプリでの計測結果を載せておきます。

Antutu Benchmarkのスコア

Geekbench 4のスコア
機能:熟成が進むEMUI



独自UIの「EMUI」については、P30シリーズあるいはEMUI 9を先に採用しているMate 20シリーズで、大きく変化した部分や新たに追加された機能などはあまりありません。まあ、絶えず変えていくことを目標にしてむやみに弄り回してしまうよりは、完成されつつある証なのでこれはこれで好ましいことかもしれませんね。
ひとつ評価しておきたいのは、マルチウィンドウ機能の呼び出し方法。Android 9の標準仕様では、いちいちアプリ履歴を開かないと画面分割ができず、これはピル型ボタンではなく従来の3ボタン式を選択できる機種でも独自に対処していない限りは同じ……という面倒な操作方法に退化してしまっているのですが、EMUIはこれまでと同じアプリ履歴長押し操作で良いのです。グッジョブ。
画面内指紋認証は光学式(指を置く部分が青く光るタイプ)で、OPPOなどの他メーカーと比べて特別遅かったり精度が悪かったりということはなく、現状の画面内指紋認証の中では普通だと思います。ただ、従来型の指紋センサーではファーウェイはトップクラスに速いメーカーだったので、これまでのPシリーズやMateシリーズから買い替えると少しギャップがあるかもしれません。
機能面ではおおむね満足なのですが、マイナスの部分を挙げるとすればオーディオ。シングルスピーカーもそうですが、イヤホンジャック経由での音もハイエンドスマートフォンとしてはがっかり。並行して使っている「Galaxy S10」と比べるとだいぶ見劣りします。ただBluetoothの対応コーデックは充実していて、aptX HDにLDAC、独自規格のHWA(FiiOなどが対応)も使えるので、ワイヤレスオーディオ環境を整えていれば割り切れる部分でしょう。
カメラ:トップランナーらしい期待を裏切らないクオリティー
約4000万画素の広角カメラを主軸に、3つのカメラで構成されている点は昨年のP20 Proと同じ。しかし、その構成は少し変わっていて、最初にライカブランドを冠したP9から受け継がれてきた「カラー+モノクロ」の構成を捨て、3つの画角を切り替えて撮影できる普通の構成になりました。これはMate 20 Proも同様ですね。
しかしそこはやはり、デュアルカメラやトリプルカメラ、ソフトウェアの力による高画質化といったここ数年のスマートフォンカメラのトレンドを牽引してきたファーウェイの作る物です。画質向上のためと説明されてきたカラー+モノクロの構成を捨てたからといって、従来機種より見劣りするなどということはありません。
ちなみに、P20でも話題になった夜景モードは、都市部の夜景では実は使わないほうがよく撮れる場面も多々あります。上の2枚の作例は、左が通常モード、右が夜景モードで撮影したものです。右下の赤い看板などを見ると、夜間モードを使うとオーバーになってしまっていることがお分かりいただけるかと思います。東京の明るい夜ではなく、真っ暗な場所で使うとこのモードの威力を実感できます。そういった意味では、P20の登場当初に付けられていた「夜間モード」という名称のほうがこのモードの性質を正しく表していたのかもしれません。
総評:このスマホを心からおすすめしたかった
ハード・ソフトともに完成度の高い機種で、個人的には非常に評価しています。短期間で買い替えるマニアでも躊躇するような状況で、物は良いのに万人の背中を押せないというのは本当に残念。この機種が正当な評価を受けられる、そしてP30 Proも晴れて発売できる日が来ることを願います。