
「auデータMAXプラン」は本当に“上限なし”なのか?“無制限”とは言っていないのがポイント
auが5月に発表、7月26日から提供開始する「auデータMAXプラン」。公式のニュースリリースの言葉を借りれば、「月間データ容量に上限のないスマートフォン向けの料金プラン」というのが最大の特徴。
このコラムのテーマはタイトルの通りですが、結論から言うと、私の見解は「確かに“上限なし”ではある。でも、“制限なし”や“無制限”とはそもそも言っていない。それが答えなんじゃないかな」です。
本当に“上限なし”なのか?

「ギガが足りない」だとか、昔とは違う用法で「パケ死」という単語が使われているだとか、そんなことが話題になるほどには今や多くの人にとって「スマートフォンの通信量制限(速度制限)」というのは当たり前の概念になっているのかもしれません。
携帯電話やスマートフォンの料金プランの歴史をほんの少しだけ遡ると、3G時代に一度は“(月間の通信量は)無制限”の時代を経ています。LTE時代は“7GB制限”から始まり、やがて利用スタイルの変化を追うように、20GB、30GB、50GBと大容量のプランが各社から登場しました。そして、「高速大容量」を実現する5G時代となれば再び“無制限”の可能性が見えてくる、そんな状況にあります。
5G時代を目前にして、一足先に“上限なし”のプランを仕掛けてきたのが今回の「auデータMAXプラン」で、発表時からSNSなどでは大きな反響があったようです。それは肯定的な反応ばかりではなく、「本当に制限はないのか」「で、実際はどういう制約があるんだ?」という、言うなれば日本の通信業界が積み上げてきたグレーな表現に対する疑いの目、魅力的に思えるプランでも額面通りに受け取ることはできないと言わんばかりの冷えた反応も少なからず含まれていました。
これについては、お役所の目が光る2019年夏の今の状況で、そんな無茶をして小銭を稼ぎにいくほど携帯キャリアも愚かではない、と私は考えています。ましてや、まさにその“無制限”を巡って争った「ギガ放題」プランを巡る裁判で、傘下のUQコミュニケーションズが敗訴したばかりですから。
プランを隅々まで読んでも、少なくとも彼らが謳う「月間データ容量に上限のないプラン」という表現が根本的に間違っているということはありません。ただ、テザリング、データシェア、世界データ定額の3つの機能については、合計20GB/月までという制限があります。
ちなみに、5月の発表当初、サポートに問い合わせたというauユーザーを起点に「テザリングで20GBを超えたらほかの機能も含めて速度制限がかかる」という説がSNS上で出回っていましたが、これは誤り(デマというよりは、おそらく発表直後の誤案内がきっかけでしょう)。7月23日時点では、公式サイトには「テザリング、データシェア、世界データ定額でデータ通信の場合、データ容量の上限は合計20GBです。20GBを超えた場合、テザリング、データシェア、世界データ定額の通信速度が送受信最大128kbpsとなります」と記載されており、あくまでこれらのサービスのみに月間上限を設けていることが読み取れます。
実は“無制限”とは言っていない
さて、このプランを検討している人の多くが気にしているであろうことは「結局、本当に制限はないの?」ということでしょう。これに関しては少し誤解があって、そもそもニュースリリースやプラン紹介などの公式情報には“無制限”という文言はありません。万が一、店頭の手作りPOPなどに書かれていたり、スタッフの口頭での案内にその言葉が出てきたら……それは指摘した方が良いかもしれませんね。まさにUQの件(ラネットの件)の二の舞になってしまうので。
話が少し脱線しましたが、「上限はないが無制限ではない」というのがポイントです。その制限がかかる条件はしっかり(と言えない部分もあるのですが)示されていて、先述のテザリングなどを除くと、大きく分けて2つの場合に速度制限がかかります。
ひとつは、「動画配信、ストリーミングサービスなどの、大量のデータ通信または長時間接続をともなうサービス」を利用する場合。こちらについては、公式サイトの表現からは特定の時間帯の制限ではないことが読み取れます。
もうひとつは、「一定期間内に大量のデータ通信のご利用があった場合、混雑する時間帯の通信速度を制限致します」とのこと。もう少しわかりやすく書くと、「短期間にたくさん使うと、混雑する時間帯だけ速度が落ちます」という制限です。裏を返せば、悪名高いSoftBank Airのように「20時になったらヘビーユーザーもライトユーザーもみんな速度制限」といった罠が仕掛けられているわけではないでしょう。
このように、“上限なし”と“無制限”という考え方をしっかり切り分けて表現されている点、そして制限がかかるシーンを宣言している点は個人的には好感が持てます。ただ、「大量のデータ通信または長時間接続をともなうサービス」が具体的に何を指しているのか、「一定期間」や「大量」はどれくらいのことなのか、肝心の部分が明示されていないのは残念ですね。後出しじゃんけんをするのか、という目で見られてしまっても仕方がないかもしれません。